発達

「読み書き」で悩んでいる人が、あなたの周りにいませんか?

音読がとても苦手でよくつっかかってしまったり、時間がかかってしまう、字を読み飛ばしてしまう人がいることをご存知ですか?

このように「読み」を不得意としている人は、多くの場合「書き」にも難しさを抱えています。

知的な問題はないにもかかわらず、「読み」と「書き」に対して特に著しい困難を抱えている状態を「読み書き困難」といいます。

具体的には、文字の読み書きの正確さ流暢さ(速さ)に困難がある状態です。

まったくできないわけではありません

読み書き困難は、学習障害(限局性学習症)の1つだといわれています。

苦手だからといって何度も音読をさせたり字を書かせる練習方法だと、上達が見込めないばかりか、本人と周囲の人々にただただ疲労感を抱かせてしまうだけです。

読み書き困難に対する正しい知識と、学習支援についてお伝えしていきます。

読みと書きの基礎知識

「低次」と「高次」の読み書き

早速大事なことですが、読み書きには「低次」と「高次」のレベルがあります。

「低次」と「高次」を整理するだけで、読み書きに対する理解がグッと深まりますよ。

読み書きには「低次」と「高次」のレベルがあります。「低次」の読みは、「そ」という文字を、「そ」という音に変換できること(読めること)です。「低次」の書きは、「そ」という字を聞いたときに、「そ」と書けることです。

「低次」の読みとは、文字を音に変換できることです。

例えば、文字の「そ」を、「そ」と読めることが、「低次」の読みになります。

反対に、「低次」の書きとは、音を文字に変換できることです。

例えば、「そ」と聞いたときや、「そ」を頭の中で思い浮かべたときに、「そ」と書けることが「低次」の書きになります。

一般的に、学習障害である「読み書き困難な状態」とは、「低次」の読み書き困難のことをいいます

読み書きには「低次」と「高次」のレベルがあります。「高次」の読みは、文章などの文字列を読んで、内容を理解できることです。「高次」の書きは、考えたり聞いたことを文章として書けることです。

一方、「高次」の読み書きもあります。

「高次」の読みとは、文章(文字列)を読んだときに、内容を理解できることです。

「高次」の書きとは、知っていることや考えていることなどを、文章として書き表せることです。

もし学習障害の診断があったとしても、「高次」の読み書きはほぼすべての人ができます

「高次」の読み書きが難しいのは、知的障害がある場合です。

読みの基礎知識

読みに関する基礎知識についてお話していきますが、ここからお話することは全て「低次」の読みについてが中心です。

繰り返しになりますが、「低次」の読み書きの困難が、「読み書き困難」という状態を生みます。

「高次」ではありませんよ。

これが最も大事な知識になります。

「低次」の読みは、まず文字を目で捉える視覚処理が行われます。次に、捉えた文字を音に変換する音韻処理が行われます。例えば、目で捉えた「あ」という文字を、音韻処理によって「あ→a」と音に変換します。音に変換された文字は、語や文章として脳で意味処理されます。意味処理は「高次」の読みに該当します。

「低次」の読みとは、目で文字を捉え、捉えた文字を音韻処理することです。

そして、音韻処理された文字が脳で意味処理されることで、わたしたちは読んだ文字の意味を理解できます(「高次」の読み)。

この「低次」の読みと「高次」の読みの間にはある仕組みがあるといわれており、これを二重経路モデルといいます。

読みの仕組みとして「二重経路モデル」が考えられています。二重経路モデルとは、文字を目にした場合、「意味ルート」と「音韻ルート」の2ルートが同時に活性化することで、文字を正しく音読できるというものです。読み書き困難の場合は、音韻ルートが上手く働かないために、音読がつたなくなってしまうと想定されています。一方、意味ルートは通常通り機能しているため、文字や言葉の意味は理解できていることがほとんどです。

文字を見た際に、脳の中では「意味ルート」と「音韻ルート」の2つの経路が働くと考えられています。

意味ルートは、文字を1つの語彙として捉え、意味を理解するルートです。

「ねこ」と言葉を見たときに、「ねこには足が4本あって、顔にはヒゲが生えていてしっぽもある動物だ」と理解できることです。

一方、音韻ルートとは、文字を一つひとつの音に捉え直し、音読を可能にするルートになります。

「ねこ」という言葉を「/ ネ / コ /」のように一つひとつの音に分けたうえで、それを「/ ネコ /」と音読できることです。

音読をしようとしても、読むのがつたなくて時間がかかる、つっかかる、字を読み間違えるなどの姿が見られる場合は、読みの困難になります

読みの困難がある人は、音韻ルートがうまく働いていないことが予想されます。

これは、子どもが大人になっても大きく変わることはありません。

しかし、意味ルートに問題はないため、知っている語彙を増やすことで文字や文章の意味を黙読で理解することはできます

音読が苦手な読みの困難な子どもへの支援は、知っている語彙を増やすことになります

当事者の言葉

「読めなくても、書けなくても、勉強したい―ディスレクシアのオレなりの読み書き―」(井上 智・井上 賞子、ぶどう社)には、

43歳でディスレクシア(知的能力には問題がないにもかかわらず、文字の読み書きに困難を抱えている状態のこと。学習障害の一種)だと知った著者の言葉があります。

オレは正しく読めない。でも、意味はわかる。ちゃんと理解できる。
「水が沸騰したら・・・・」の「沸騰」が読めなくても、
「沸騰」という漢字の形を見たら、
「ああ、水が100度を越して、ぼこぼこなるってことやな」とわかる。

読み書き困難がある人は、音韻ルートがうまく働かないために読むことができません。

しかし、意味ルートは問題なく機能しているため、文字を目で捉えて視覚処理できれば、その意味を理解することができます

この著者の言葉は、まさにそのことを示す言葉ですよね。

書きの基礎知識

読むことが難しいと、当然書くことも難しくなります。

なぜなら、文字を書くことにも音韻処理が必要になるからです。

「低次」の書きは、まず書こうと思った文字を音韻処理する必要があります。つまり、文字と音をつなげる作業です。例えば、「犬」と書きたい場合は、「イ / ヌ」と変換しないといけません。次に、変換した字を書字運動によって書き表します。考えたものを文章で書きあらわすことは、「高次」の書きに相当します。

例えば、「おにぎり」と書きたい場合、「おにぎり」という言葉を音韻処理によって「 / オ / ニ / ギ / リ/ 」の音に一つずつ分けなければいけませんが、うまくいかないので「おぎり」といったような字抜けになることがあります。

これは、拗音(小さい「や・ゆ・よ」)などが含まれると起こりやすくなる場合もあります。

いずれにしても、文字と音をつなげる操作である音韻処理の難しさが、そのまま文字の読み書きの難しさとして表れていることが理解できたのではないでしょうか。

読み書き支援

読み書きを支援する方法としては、大きく2つあります。

  • 読み書きできるようにする支援
  • 読み書きを補助・代替する支援

順番にご説明しますね。

読み書きできるようにする支援

ひらがなの支援

ひらがなの支援は小さいお子さん向けではありますが、書くのが苦手であれば年齢に関係なく行ってみても良いでしょう。

  • 粘土やモールなどでひらがなを作る
  • なぞり書き
  • ひらがな50音表
  • キーワード法
  • 音の視覚化・動作化
①粘土やモールでひらがなを作る

粘土やモールでひらがなを作る方法は、楽しみながらひらがなの成り立ちや書き順、バランスなどを学ぶことができます

読み書き困難の人のなかには字をうまく認識することができない方もいますが、自分で粘土やモールを触りながらであれば認識できる場合もあります。

ただ紙に書いてあるひらがなを何度も繰り返し見たり書いたりするよりはオススメです。

②なぞり書き

なぞり書きはなぞり書きです。

説明するほどのものじゃなく、字を覚えるときにはよく使われる方法だと思います。

少し工夫を加えるのであれば、A4の紙にたくさんの字のなぞり書きを配置するではなく、A4ページにでかでかと1文字だけなぞり書きのひらがなを配置する方法もあります(紙いっぱいの大きさの「あ」を書いておく)。

「でっか!笑」と言いながら楽しく取り組んでくれるお子さんもいますよ。

それだけ大きいほうが、字を認識しやすいという場合もあるかもしれません。

③ひらがな50音表

ひらがな50音表はひらがなを覚えるために使うのではなく、検索を早くするために使用します

自分の書きたいと思ったひらがなが50音表のどこにあるのかがわかれば、書くことへの負担も減ることになり、苦労も減るでしょう。

字を書く際には、50音表を見える位置に置いておくとオススメです。

④キーワード法

キーワード法は、ひらがな1文字と、その1文字目から始まる物のイラストを併せて提示する方法です。

「『い』は『いぬ』の『い』だね」と伝え、イメージと結びつけながら覚えていくほうが格段に覚えやすいです。

裏表でひらがなとイラストを分けることで、クイズ形式にして楽しくひらがなとイメージを結びつけていくこともできますよ。

キーワード法とは、ひらがなをイラストなどのイメージと結びつけて覚える方法です。
⑤音の視覚化・動作化

読み書き困難な場合、音韻処理(音の操作)に困難さがあるとお伝えしました。

この音の視覚化・動作化は、その音の操作をサポートし、ひらがなが持つ音のイメージを掴みやすくするための方法になります。

読み書き困難の場合は、音の操作である音韻処理に困難があります。したがって、音を視覚化することで音を捉えやすくなる可能性があります。
読み書き困難の場合は音の操作である音韻処理に困難がありますが、音の動作化は音を捉えやすくなる可能性があります。

動作化に関して、通常の音のときは手を叩きます。促音のときは手を叩かずに、握りこぶしを作るだけです。

例えば、「まくら」と言いながら手を3回叩きます。

「まっくら」のように、促音のときは手を叩かずに握りこぶしを作るだけにして、通常の音である「ま」「く」「ら」のときは手を叩きます。

ただし、音の視覚化・動作化よりも先に述べたキーワード法などのように、まずはひらがなをイラスト(イメージ)などと結びつけることを優先してください。

漢字の支援

漢字については、読みよりも書きが苦手な場合が多いです。

漢字については多くの書籍がありますので、そのご紹介をしていきますね。

通常の教材や漢字ドリルなどよりは、とっつきやすいと思います。

子どもが興味を持ちそうなものがあれば、使ってみても良いかもしれません。

  • 書き順を言語化して覚える
  • 語呂合わせで覚える
  • パーツ(へんとつくり)の組み合わせで覚える
  • 漢字に視覚的な意味づけをする
①書き順を言語化して覚える方法

となえておぼえる漢字の本(下村式シリーズ)

となえておぼえる漢字の本(下村式シリーズ)
②語呂合わせで覚える方法

小学漢字新字典 辞書+αで学ぶ

小学漢字新字典 辞書+αで学ぶ
③パーツ(へんとつくり)の組み合わせで覚える方法

漢字はかせ 「へん」と「つくり」を合わせるゲーム

漢字はかせ 「へん」と「つくり」を合わせるゲーム
④漢字に視覚的な意味づけをする

輪郭漢字カード

輪郭漢字カード

読み書きを補助・代替する支援

ここまで読み書きできるようにするための支援をお伝えしてきました

しかし、読み書き支援において本当に大切なことは読み書きを補助・代替する支援を行い、学習に遅れないようにすることだと考えられます。

そもそも学習とは、ひらがなやカタカナ、漢字を正確に速く書けたり読めたりすることではありません。

学習の本質とは、考えたり、予測したり、客観的・論理的な思考をすることであり、それらを文章や口頭で誰かに伝えることです。

「高次」の読み書きこそが、学習の本質であるといえます。

読み書き困難の人たち・子どもたちは、「高次」の読み書きには何の困難も抱えていないとお伝えしました。

学習の本質が考えること・自分の考えを誰かに伝えることなのに、いつまでも「低次」の読み書きをさせていることはもったいと思いませんか?

読み書き困難は学習障害の1つです。

努力不足や練習不足などではなく、生まれつき文字の読み書きに困難を抱えています。

であれば、「低次」の読み書きに相当する部分をスマートフォンやパソコン、代読や代筆などによって補助・代替し、本来取り組むべき学習を支援してあげることが望ましいといえるでしょう。

読み書きできないことの苦悩

少しショッキングな情報になりますが、小学生や中学生、高校生などの子どもの自殺原因の第一位は「学業不振」です。

厚生労働省や警察庁の自殺に関する報告書によると、まず子どもたちの死因の第一位~ニ位は「自殺」になります。

子どもの死因において、自殺は1位および2位になっています。
子どもの死因において、自殺は1位および2位になっています。
令和3年版自殺対策白書より抜粋│厚生労働省

自殺の原因・動機を調査した結果によると、10代の子どもたちでは「学校問題」が自殺の最も多い動機です。

警察庁によると、特に「学業不振」が最も多い自殺理由だったことが明らかにされています(小・中学生の自殺、原因の1位は「学業不振」)。

この学業不振の中には、学習障害である読み書き困難な子どもたちが多く含まれていたと考えられます。

なぜならば、学習障害は知的な遅れがないからです。

知的障害などの知的な遅れがある場合は、周囲からの支援および配慮や環境調整を受けることができるため、学業不振が問題となることはほとんどありません。

しかし、学習障害の場合は知的な遅れがないために周囲が気づきにくく、知らず知らずのうちに本人を追い詰めてしまっている場合が多いです。

「ただ字が読み書きできないだけでしょ?何度も読み書きして練習したら?」と軽く考えるのではなく、「子どもたちにとっては自殺を考えるほど深刻な問題なのだ」と捉えてあげてください。

読みへの代替・補助支援

  • レイアウト変更(フォント変更含む)
  • スリット
  • カラーフィルター
  • 読み上げ(代読)
  • DAISY図書・教科書
①レイアウト変更

文章のレイアウトの変更として有効だと判明しているのは、主に「行間拡大」「分かち書き」「文字拡大」の3つです。

加えて、フォントを明朝体や教科書体ではなく、UD(ユニバーサルデザイン)のフォントに変更したり、丸ゴシック体などに変更したりすると読みやすさが上がります。

文章を読みやすくするうえで効果的であるといわれているのは、「行間の拡大」「分かち書き」「文字拡大」の3つです。
文章を読みやすくするうえで効果的であるといわれているのは、「行間の拡大」「分かち書き」「文字拡大」の3つです。
②スリット

スリットは文字の認識度を上げてくれます。

「低次」の読みでお伝えしたように、視覚処理を補助してくれるものです。

読みたい部分だけが見え、他の部分は見えないようになっているスリットは、文章を読む際の補助具として効果的な場合があります。

ここまででご紹介したレイアウトの変更やスリットなどは、文部科学省の学習指導要領にも記載されています。

学習指導要領とは、全国どこの学校でも一定の水準を保つことができるようにするための基準です。

小学校学習指導要領国語編

文章を目で追いながら音読することが困難な場合には、自分がどこを読むのかが分かるように教科書の文を指等で押さえながら読むよう促すこと、行間を空けるために拡大コピーしたものを用意すること、語のまとまりや区切りが分かるように分かち書きされたものを用意すること、読む部分だけが見える自助具(スリット等)を活用することなどの配慮をする。

このように、学校の先生にも読み書き困難な子どもたちへの配慮が求められています。

③カラーフィルター

カラーフィルターとは色のついたA4サイズのファイルのような物です。

文字の上に置くことで、読みやすくなる場合があります。

背景に色をつけてみて読みやすくなるのであれば、カラーフィルターを購入してみても良いかもしれません。

Amazonなどで「カラーフィルター」と検索すればたくさん出てきますよ。

カラーフィルターによって文字の背景に色がつくことで、文章を読みやすくなる場合があります。
④読み上げ(代読)

代読は、読みに対して困難がある場合にとても有効な方法です。

「低次」の読みの仕組みでもお伝えしたように、「視覚処理」「音韻処理」が「低次」の読みです。

読みに困難がある子どもはこの2つが苦手ですが、代読してもらうことでこの2つの処理をせずに内容を頭の中で理解することができます(「高次」の読みを行うことができる)

代読は、読みに困難がある学生が入学試験を受ける際にも認められたことがある方法です。

石川県立高校では、学習障害の生徒に対して「代読」での試験を認めたことがこれまでにあります。代読は、学習障害の子どもにとって代替手段として確立された方法です。
⑤DAISY図書・教科書

DAISY(デイジー)図書とは、学習障害などの発達障害や弱視などの視覚障害、その他の障害の児童・生徒のために作成されたデジタル図書・教科書のことで、日本障害者リハビリテーション協会へ申請することで使用することができます。

デイジー図書は、通常の教科書と同様のテキスト、画像を使用し、テキストに音声を同期させて読むことができるものです。子どもは音声を聞きながらハイライトされたテキストを読み、同じ画面上で絵を見ることもできます。

申請は、保護者、担任、通級指導担当、校長、教育委員会、支援者、本人でも行うことができます。

医学的診断などは不要で、ダウンロード版であれば無料で使用できますよ。CD版が欲しい場合は、児童生徒1名1教科につき3000円です。

デイジー図書の他にも、読むことに困難を抱えている児童生徒へ向けた教科書や図書のサービスはたくさんあります。

例えば、AccessReadingは東京大学先端科学技術研究センター図書室が運営しているサービスで、Wordがパソコンにインストールされていれば使用することができます。

ぜひ検討してみてくださいね。

読み書き困難な児童生徒に対して、電子教科書や電子図書は普及してきています。多くの大学や支援機関で発表されており、「デイジー教科書」「AccessReading」「BEAM」「ペンでタッチすると読める音声付教科書」「UD-Book」「UNLOCK」などがあります。
マルチメディアデイジー教科書
マルチメディアデイジー教科書

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AccessReading
AccessReading

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わたしたちについて – 特定非営利活動法人エッジ NPO EDGE (Japan Dyslexia Society)
わたしたちについて – 特定非営利活動法人エッジ NPO EDGE (Japan Dyslexia Society)

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http://apricot.cis.ibaraki.ac.jp/textbook/
ペンでタッチすると読める音声付教科書

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愛媛大学 UNLOCK
愛媛大学 UNLOCK

UNLOCKとは、愛媛大学が提供する音声付き教材です。”制限をなくす、教科書への鍵を解錠する”という意味を込めています。

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広島大学 UD-Book(文字・画像付き音声教材)サイト内(ホームページ)
広島大学 UD-Book(文字・画像付き音声教材)サイト内(ホームページ)

広島大学 氏間和仁研究室が提供している,文字・画像付き音声教材に関する情報をお届けするホームページサイトです。

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書きへの代替・補助支援

  • 代筆
  • 写真
  • キーボード入力
  • 音声入力
  • マインドマップ・付箋
①代筆

書くことに困難があり、負担になってしまう児童生徒に対して、文部科学省は「『特別支援教育支援員』を活用するために」の資料において、代筆などの支援を行うことを明記しています。

文部科学省によると、発達障害の児童生徒に対して黒板の読み上げを行ったり、テストなどで代筆を行うことは認められています。
②写真

板書されたものを写真に取ってノートにする、あるいは取った写真を印刷して紙のノートに貼る方法が考えられます。

他には、配られたプリントを写真に取り、それにタブレットやPC上で回答を記入したものを印刷して提出する方法もあります。

最近の授業では一人一台タブレットやPCを使用しているので、それほど難しい手段ではないでしょう。

③キーボード入力

書字ではなく、タイピングによるキーボード入力でノートを作ったり、テストの答案を作成する方法があります。

「低次」の書きで解説したように、字を書くためには音韻処理をしなければなりませんが、読み書き困難の人は音韻処理に困難を抱えています。

しかし、キーボード入力において、字を入力するのに音韻処理は必要ありません。

必要なのは、「指の運動記憶」だけです。

運動記憶というのは手続き記憶とも呼ばれるもので、一言で言えば体で覚えている記憶です。

例えば、「頭で意識しなくても自転車に乗れること」が手続き記憶になります。

つまり、キーボード入力で目指すものは「キーボードを見なくても勝手に指が動く」状態です。

「A→あ」「KA→か」になるといったことを教えるわけではありません。

左手の薬指でここを押すと「あ」と入力される、右手に人差し指でここを押した後に左手の薬指でここを押すと「か」と入力される、といったことを何度も繰り返し行い、体に覚えさせます。

今の御時世、仕事においては手書きよりもスマートフォンやパソコンで入力するほうが圧倒的に多いです。

早い段階からキーボード入力をできるようになっておくと、将来の仕事業務にも直結してくるでしょう。

④音声入力

音声による入力は、あらゆるデバイスで可能です。

Windowsがインストールされているパソコンであれば、Windows10、11の機能として「音声入力」があります。

Chromebookであれば、「ユーザー補助機能」に音声入力があります。

スマートフォンでも音声入力はできます。例えば、Andoroidのスマートフォンには「Google音声入力」のアプリがありますよ。

⑤マインドマップ・付箋

文章を書く際の補助手段として、マインドマップや付箋は有効な場合があります。

例えば、遠足や社会科見学などの感想文を書く際に、書く内容をまとめたり整理したりするのにマインドマップは効果的です。

国語の教科書に出てくる物語なども、マインドマップを使用することで内容を整理できます。

マインドマップを活用している事例は、こちらでみることができます。

おすすめのアプリは、「simplemind」です。スマートフォンやWindowsで使用できますよ。

【おまけ】学習障害│限局性学習症

学習障害とは、知的な問題がないにもかかわらず、読み書き能力や計算力などの算数能力に関して特に著しい困難を示す発達障害です。

限局性学習症やLDとも呼ばれ、クラスに一人はいます。

学習障害には、読字に困難が見られるタイプ、書字に困難が見られるタイプ、算数に困難が見られるタイプの3タイプがありますが、読字と書字のどちらも見られるといった複合型もあります。

特に、読み書きに困難が見られる場合はディスレクシアと呼ばれ、学業不振や登校しぶり、不登校、自殺といった深刻な問題と関連しています。

読み書き困難であるディスレクシアの特徴。文章を読む際の拙さや流暢性のなさ、正確性のなさなどが特徴です。

学習障害に必要なのは勉強量ではなく、適切な検査と支援に基づいた学習方法の確立です。

まとめ

読み書き困難は、まったく読めないわけではありませんが、文章を読む際の流暢性と正確性に困難が見られる状態です。

彼らに必要なのは誤った練習を強いることではなく、適切な検査に基づいた支援方法の確立です。

「低次」の読み書きにばかり注目するのではなく、学習の本質である「高次」の読み書きを支援していきましょう。

  • 読み書きできるようにする支援
  • 読み書きを補助・代替する支援

基本的には、①の読み書きできるようにする支援を行いつつ、②の読み書きを補助・代替する支援も並行して行っていきましょう。

ただし、重要度でいえば②の補助・代替する支援のほうが上です。

大人になって働くようになれば、自分の手で直接字をノートに書いたりすることよりも、スマートフォンやパソコンを用いて文章を作成するほうが圧倒的に多いからです。

将来も見据えた支援を行っていきましょう。

あとがき

仕事をしていると、読み書き困難の子どもに時折出会います。

字を読む姿はとても拙く、正確性にも欠けるのですが、スタッフが文章を読み上げると即座に理解し、設問にも正確に答えることができます。

読み書き困難には知的な問題がありませんので、当然ですよね。

しかし、自分で文章を読もうとした場合はなかなか読み進めることができないので、設問にも答えることができません。

この場合、文章を読むことをひたすら練習させるべきでしょうか?

それとも、文章は代読やパソコンなどの読み上げ機能を使うべきでしょうか?

もし文章をひたすらに読む練習をした場合は、苦手なことにずっと取り組むわけですから意欲の低下は著しいでしょう。

一方、代読や読み上げ機能を使った場合は、自分の意見や考えを積極的に発表することができるので活発な話し合いにも発展しやすいですし、本人が本来持っている理解力なども周囲に伝わりやすいでしょう。

加えて言うなら、大人になってからパソコンを扱うスキルは必須になるので、子どものうちからパソコンに慣れ親しんでおくことは役立つと考えています。

パソコンなどの電子機器による読み書きの補助・代替手段は非常に豊富なので、ぜひ試してみてください!

参考資料

厚生労働省. 学習障害(限局性学習症) e-ヘルスネット[情報提供] Retrieved October 25, 2022 from https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

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