療育

発達障害が気になるあなたへ 今日から学ぶ発達あれこれ(環境構築編)

発達障害って何?

診断されたらどうしたら良いの?

治るものなの?

これらの疑問は前回のお話で明らかにしました。もしまだご覧になっていない方は、どうぞ見てみてください。

今回は続きです。

環境を作るうえで、とても役立つ考え方であるTEACCH(ティーチと呼びます)のお話をしますよ!

発達障害のあるなしに関係なく、子どもと大人の違いも関係なく、全人類にとって役に立ちます。

おさらい│発達障害って?

発達障害=発達上の特徴+日常生活の困り感

発達障害とは、何らかの「発達上の特徴」があり、その特徴によって日常生活を送ることが難しくなっていることを指します。

発達上の特徴は特に特別なものではなく、誰もが持っている個性(例えば、活発さなど)です。

ただし、当然個性ですので個人差があります。活発な子もいれば、大人しい子もいますよね。

その活発さの程度がとても大きく、日常生活を送ることが困難な場合に医師から発達障害といわれる可能性があります(例えば、授業中に椅子に座っていられない、何度注意されてもお母さんの側から離れてしまうなど)。

発達障害の名前の由来は、しっかりと発達することができない、発達に異常があるという意味ではなく、人が最も成長する子どもの時期(発達の時期)に日常生活での困りごとや問題が発覚しやすいからです。

ここまでの話で、発達障害をなんとなく理解することができたでしょうか?

一言でいえば、誰にでもある個性がとがりすぎてしまったために、生活を送るうえで難しさを感じるようになってしまった状態です。

発達障害の人は個性の程度が大きいために、得意不得意の差が大きくなりやすい。

発達障害は「フェラーリ」

「発達障害の人はフェラーリだよ。」

かつて大学の先生から教わった言葉です。

フェラーリは高級スポーツカーの代表的な存在で、最高時速は316キロ、アクセルを3秒踏むだけで止まった状態から100キロまで加速します。

とてつもなく速い車だと伝わったでしょうか?

しかし、フェラーリが日本の道路を満足に走れるでしょうか?

・・・そうです。フェラーリは道路を満足に走れないんです。少しでもアクセルを踏むと100キロ出てしまうんですよ?信号機が青になってアクセルを踏んだ途端、ロケットスタートをして前の車に激突してしまいます。

フェラーリにどれだけの力があったとしても、速度制限が40キロ前後で、入り組んだ道が多い道路では力を発揮できません。

では、レースが行われるサーキットではどうだと思いますか?

そう!サーキットであればフェラーリは全力を出すことができます。速度制限なんてありませんし、速度を出しやすいように直線が多く用意されています。

発達障害の話と似ていますよね。

フェラーリと一般車はどちらも車という点では同じですが、速度の程度が異なります。

フェラーリは速度という特徴が一般車に比べてとがりすぎています。その結果、できること(=速度を出すこと)と、できないこと(=道路を満足に走れないこと)が明確になっています。

大切なことは、フェラーリも環境さえ用意されていれば(サーキットがあれば)、全力を出すことができる点です。

発達障害も、本人を取り巻く環境さえ整えてあげることができれば、力を発揮できるのです。

支援のポイントは周りを取り巻く環境に目を向けること

発達障害にはASD(自閉スペクトラム症、自閉症)、ADHD、学習障害(LD、限局性学習症)がありますが、全てに共通する支援のポイントは環境を重視することです。

わかりやすい環境を整える方法│TEACCH│ティーチ

「構造化」という言葉をご存知でしょうか?

構造化とは、生活や学習などの子どもを取り巻く環境やスケジュールをわかりやすく伝える方法です。

別の言い方をすると、子どもに周囲で何が起こっているのか、子ども一人ひとりの特徴に合わせて、何をすれば良いのかをわかりやすく伝える方法です。

構造化の発想は、TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren│自閉症などのコミュニケーションにハンディキャップを持つ子どもたちに対する治療と教育)というプログラムから生まれています。

実際の構造化の例を見たほうがイメージがつきやすいと思うので、いくつか見てみましょう!

書籍│「自閉症児のためのTEACCHハンドブック」よりいくつかご紹介

ついたてやパーテーションによって構造化されている特別支援学級の例。
特別支援学級の様子

特別支援学級のクラス内の写真です。パーテーションや棚などを使うことで教室内が仕切られており、勉強するときはこの場所、休憩するときはこの場所などのように明確に理解できるようになっています。子どもからすると、どこで何をすれば良いかがわかるので、混乱したり不安になることは少なくなります。

学習場所の構造化の例。パーテーションで隣の子どもに気が向かないようにされている。目の前の窓にも布のようなものが付いており、外からの刺激が入らないようになっている。
自分の学習場所

特別支援学級の学習環境です。隣の人とはパーテーションで仕切られているため、目の前の学習に集中することができます。窓に向かって机が置かれていますが、フィルムなどを貼ることで外の様子は見えなくなっていると考えられます。学習するプリント類は右隣にある棚に置かれており、全てのプリントを「おわり」と書かれたトレイに入れることで学習は終わりです。

構造化された特別支援学級の例。パーテーションやついたて、棚などを使って学習エリアや休憩エリアが分けられている。
特別支援学級の場所の構造化

棚やパーテーションを使うことで空間を仕切り、個別で学習するスペースや先生と学習するスペース、休憩したりリラックスしたりする場所を作っています。子どもたちは「どこに行けば何ができるのか」を理解しやすく、落ち着いて過ごすことができますね。特にリラックスコーナーは、棚だけでなく畳を使うことで視覚的にもわかりやすくなっています。

教室内にある物を置く場所の構造化の例。テープが貼ってあることで自分の場所がわかりやすくなっている。かごには文字が書かれており、提出物をどこに置いたら良いか理解しやすい。
教室内の物置き場

道具や物を仕舞う棚にはテープで線が引かれており、テープの内側に自分の物を仕舞うようになっています。宿題や提出物はそれぞれ名前の書かれた専用のトレイが置かれており、どこに何を入れたら良いのかがわかるようになっています。

スケジュールの構造化の例。1ヶ月の予定や1週間の予定、1日の予定が絵カードによって作られている。
スケジュールの例

ひと月分の大まかなスケジュール、一周間の予定が載ったスケジュール、そして一日の細かな予定がスケジュールになっていますね。マグネットやマジックテープで貼ったり取れるような作りになっており、終わった予定は剥がして仕舞っていく作りになっています。今後の見通しがつくので、子どもからすると落ち着いて生活を送ることができるでしょう。

1日の時間割がスケジュールになっている。イラストと文字によって理解しやすくなっている。
スケジュールの例

一日の学校でのスケジュール(時間割)がホワイトボードにまとめられています。イラストと文字を使った時間割カードによって、ひと目で学校での見通しがつくように作られていますね。

構造化の例。机を拭く際の手順が視覚的にわかりやすくなっている。
机の拭き方

机を拭き掃除する際の方法が見てわかるようになっています。これを見た子どもは、数字の順番通りに矢印の方向へ拭けば良いことを理解できますね。

構造化の例。ぞうきんの面を使う際の順番が視覚的にわかりやすくなっている。
使用する順番が見てわかるぞうきん

ぞうきんに数字が縫ってあり、どの面を使って掃除していけば良いのかがわかりやすくなっています。子どもは数字の順番通りに、ぞうきんを使うことができます。

場所・空間に関する構造化のポイント

子どもが主に過ごす場所である家や学校などを構造化する際には、ひと目見てその場所がどんなことをする所なのかがわかることを重視しましょう。

ポイントは次の5つです。

  • 環境の意味を、子どもが視覚的に理解できるようにレイアウトする(例えば、ここは勉強する場所、ここは休憩する場所など)
  • 同一の場所を、なるべく多目的に用いないようにする(例えば、学習や作業をする場所では遊ばない、食事をする場所では遊んだり学習したりしない
  • 子どもによっては、高度な(より厳密な)構造化が必要になる。多くのついたてやパーテーション、仕切り、色分けしたカーペットなどを用いる
  • 鏡や窓の近くに、学習したり作業したりする場所を作らない。鏡や外からの刺激が学習への集中を妨げる
  • 出入り口の管理を十分にする

学習場所の構造化のポイント

学習をする場所の構造化では、刺激をどれだけ減らして、学習に集中させることができるかが大事になります。

ポイントは6つです。

  • 個別で学習する場所と、グループで学習する場所を用意する
  • 学習するための場所は、最も集中しやすい(最も刺激が少ない)場所を選ぶ
  • 子どもに、そこが学習する場所であることを示す印やイラストをつける
  • 学習する場所を頻繁に変えない
  • 教材は、学習する場所の一箇所に集中して置く(机の隣に置いてある棚など)
  • 子どもが終わらせた教材を置くための場所を用意する(プリントが入るサイズのかごやトレーなど)

スケジュールの構造化のポイント

今後の見通しをわかりやすく伝えるスケジュールは、子どもが安心して落ち着いた生活するうえで必須のものになります。

ポイントは3つです。

  • どんな活動や課題があって、どんな順序になっているのかを、一人ひとりの特性や得意不得意に合わせて視覚的に提示する
  • 文字カードや絵(イラスト)カード、写真、実際の物などを用いて提示する
  • 一度にどれだけの時間分を示すのかを考慮する。半日分ずつ2回に分けるのか、1日分を全部提示するのかを考える。週間のスケジュールの理解ができる子どもには、それも提示すると良い

環境構築編│まとめ

  • 発達障害は「フェラーリ」
  • サーキットという環境があってはじめて全力を出すことができるフェラーリと同じように、発達障害の場合も環境を整えてもらうことで力を発揮できる
  • 環境を整えるための具体的な方法が「構造化」
  • 構造化とは、子どもに周囲で何が起こっているのか、子ども一人ひとりの特徴に合わせて、何をすれば良いのかをわかりやすく伝える方法
  • 構造化のポイントは、視覚的に何をすれば良いのかが理解できること

環境を整える方法として構造化をご紹介しました!

構造化は子どもにとっての余計な刺激を減らし、何をすれば良いのかを視覚的に伝える方法です。

何をすれば良いのかがわかると不安が減り、落ちついて行動できることが増えます

これは子どもだけでなく、大人も同じですよね?

初めての場所では不安になりますし、予定の見通しが立たないと落ち着かなくなります。

誰にとってもわかりやすい環境を作り、安心して過ごせることで十分な力を発揮できるようになりますよ。

ぜひ構造化をお試しください!

環境を整えることについては、こちらの記事にも書かれています。もし興味があればどうぞ!

あとがき

私自身、とても気が散りやすく注意の移り変わりも激しいので、身の回りの刺激を減らすことにはとてもこだわりがあります笑

仕事をするうえで一日の見通しが立たないとイライラするので、今日やるべきことは紙に書き出し、終わったら線を引いて消しています。

毎日を気持ちよく過ごすために、自分のできる範囲で工夫して過ごしています。

みなさんも決して無理はせず、できそうなところから視覚的に理解しやすいような工夫をしたり、スケジュールを作ったりしてみてくださいね!

参考文献

佐々木 正美(2008). 自閉症児のためのTEACCHハンドブック 改訂新版 自閉症療育ハンドブック 株式会社学研プラス

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