子どもは、お母さんがしてほしくないことを何度もするものです。
かんしゃくを起こす、お友達を叩く、暴言を吐く、物を投げるなどなど・・・。
これらの困った行動は望ましくない行動といわれており、できれば無くなってほしい行動です。
以前に、子どもの行動を観察して①望ましい行動、②望ましくない行動、③絶対に許してはいけない行動の3つに分類することを伝えました。
分類することで、それぞれの行動への対応方法を明確にすることができます。
望ましい行動への対応方法は、「役立つ褒め方10カ条」としてまとめたので、気が向いたときにでもご覧になってみてください。
子どもを褒める際の重要なポイントを余すことなく詰め込みました。
今回は、お母さんや先生たちを困らせる望ましくない行動への対応方法をご紹介します。
単純に叱ったり怒ったりするのではない対応方法について見てみましょう。
今のあなたに役立つ情報があるかもしれません。
望ましくない行動を防ぐ環境を整える
物や家具の配置を考えて、望ましくない行動を物理的に防ぐ
壁や家具などを利用することで、子どもの望ましくない行動が起きにくいような環境を作ります。
例えば、食事中に何度も離席する子どもを考えてみましょう。
お母さんが「座って食べなさい!」と言ったところで椅子に座ることはありません。
おもちゃのほうへ行ったり、テレビのほうへ行ったりする行動が見られています。
そんなときは、物理的に離席することを難しくするような位置に子どもや家具を配置します。
他の望ましくない行動に対しても、物理的に防ぐことができる工夫はあります。
例えば、食事中に食器を持たずに直接口をつけて食べてしまう子どもには、椅子とテーブルの高さを調整して口をつけたくてもつけられないようにする工夫もあります。
子どもを取り巻く物をちょっと工夫することで、望ましくない行動を防ぐことはできます。
視覚と聴覚から子どもに入る情報を調整する
子どもの興味を引くものをよく考えることで、望ましくない行動を防ぐことができます。
具体的には、子どもの視覚と聴覚から入る情報を主に調整することで、子どもは望ましくない行動をせずに、落ち着いて望ましい行動ができるようになります。
1つ前の話題で掲載したスライド「物や家具の配置を考える」で既に出しましたが、「外食での配置」において子どもの視線ついて触れました。
「角席であれば、子どもの視線の先が壁だけになるのでさらに落ち着くことが期待できる」と説明しています。
ここに書いてあるように子どもの視線の先にあるものは重要で、子どもに落ち着いてほしい場合はなるべく視線の先に物が無いようにすると落ち着いて話を聞くことができます。
食事をしたり勉強をしたり、何らかの活動に取り組む際には子どもの視界に入る情報量を意識し、なるべく物を少なくして落ち着いた環境を整えてあげるようにしましょう。
子どもの視界に入る情報を調整することは、子どもの望ましくない行動を防ぐうえでとても重要です。
食事中に何度も椅子から降りて立ち歩いてしまうような子どもであっても、絵本が入っている本棚にカーテンレールを付けて見えないようにしたり、蓋がついているおもちゃ箱を使用して遊ばない時には蓋をして見えないようにしたり、テレビを消すことで座って食べることができるようになることもあります。
視覚の他には、聴覚も重要です。
耳から入る情報は目と比べると少ないですが、音に敏感な子どもは多いです。
活動に取り組んでほしい場合には、テレビを消したり、家の外が静かな時間帯(朝や夕方といった通勤時間以外)にすると良い場合があります。
とはいっても、家の外よりは家の中のことを主に考えるだけで良いでしょう。
多くの場合、テレビを消すだけで子どもにとっては効果的といえます。
ここまでは、子どもに望ましくない行動をさせずに落ち着いて望ましい行動をしてもらうために、目や耳から入る情報を少なくするというお話をしました。
子どもは、視覚や聴覚などの目や耳を通して入ってくる情報に大きな影響を受けて行動してしまいます。
ということは、子どもの好きなものや興味を引くものを用いることで、子どもは課題や活動に集中して取り組みやすくなるともいえます。
アンパンマンやポケモンが好きなら、課題に取り入れることで子どもは積極的に取り組むようになるかもしれません。
ただし、子どもの好きなものを取り入れた結果、それにだけ注目し続けてしまうのなら困ってしまいます。
例えば、少しでも勉強してほしいと思って大好きなポケモンの鉛筆を買った結果、筆箱から出して鉛筆を見たり持ったりするようにはなったけれども鉛筆に注目しすぎて肝心の勉強ができない・・・ということがあります。
鉛筆だと勉強するという望ましい行動ができなくなるから、鉛筆は絵や柄などがないシンプルなものにして、取り組む課題のほうにポケモンのイラストを取り入れてみる・・・といった試行錯誤を繰り返していくことで、最適な方法が見つかると思います。
子どもの視覚と聴覚から入る情報を意識して、子どもにとって落ち着いて行動できる環境を作ってあげましょう。
ポイントは、物や刺激はできるだけ少なく、シンプルにするということです。
欲求の操作
欲求の操作とは、子どもの「これがしたい!」「あれがしたい!」という欲求の気持ちを調整する方法です。
「操作」と書いてありますが、子どもを操ったりするわけではありません。
欲求の操作はハマると効果的な方法なので、身近な例を使ってご紹介します。
例えば、ビールを何杯も飲んだ後にまた飲むビールと、1週間断酒をして週末の仕事終わりに飲むビールはどちらがおいしいでしょうか?
デザート食べ放題で何個もデザートを食べた後に食べるチョコケーキと、1ヶ月甘いものを我慢し続けた後に食べるチョコケーキはどちらがおいしいと思いますか?
おそらく、多くの人が断酒をして我慢し続けた後に口にするビールと、甘いものを我慢し続けた後に食べるチョコケーキを「おいしい!」と感じるでしょう。
ビールやチョコケーキはもとから好きなものですが、我慢をしたことで魅力が増し、おいしさもアップしたことでしょう。
逆に、好きなものであっても何杯も飲めばビールに対しての魅力は下がり、飲んだときの「うまい!」という感覚も落ちるでしょう。
ビールは1杯目が一番うまいとも言いますよね。
チョコケーキについても、何個も食べた後だと飽きてしまい、おいしく食べ続けることは難しいでしょう。
無理をして食べ続けると、好物だったとしてもしばらくは「チョコケーキは食べたくない」と思ってしまうかもしれません。
このように、好きなものに対する気持ちは変動します。
この好きなものに対する欲求や魅力度を変える方法が「欲求の操作」になります。
具体的な方法については、例を使って説明します。
例えば、スーパーやお店に連れていくと走り回ってしまい、お母さんとゆっくり買い物できない子どもがいます。
何度約束事をしたり叱ったりしても変わりません。
このような場合には、買い物に行く前に公園で鬼ごっこなどの走る遊びを行い、子どもが満足してからスーパーに行くとお母さんと歩いて買い物できることが多いです。
これは、既に公園で大好きな走る活動をしていたため、「走りたい!」という欲求が小さくなっていたからです。
家の洗面台や風呂場で水遊びが激しくなってしまう子どもの場合は、帰宅前にプールで遊ばせるという方法も欲求の操作です。
子どもに望ましくない行動があるときは、適切な方法で気持ちを満足させておくことで(例えば、公園で鬼ごっこをして走る、プールで水遊びをするなど)、望ましくない行動を防ぐことができるかもしれません。
伝える内容を工夫する
肯定的に伝える
「~したらいけません」ではなく、「~をします」といったように肯定的な表現を使いましょう。
「机の上には乗りません」「廊下は走りません」「ドアをバタンと閉めたらだめです」「立ち歩かないでください」といった叱り方は一般的なものだと思います。
「~したらいけません」「~したらだめです」といった言い方を多くの人がします。
しかし、「~してはいけない」という言い方は、結局子どもに「何をすれば良いのか?」を伝えていません。
子どもからすると、「するなって言われたけど、じゃあ何をすれば良いの?」となります。
ですので、望ましくない行動をしている子どもに対しては、「~したらいけません」と注意するのではなく、今すべき行動を「~をします」と伝えてあげてください。
① 机の上には乗りません
② 廊下は走りません
③ ドアをバタンを閉めたらだめです
④ 立ち歩かないでください
⑤ 片付けなさい
⑥ ごはんで遊びません
① 椅子に座ります
② 廊下は歩きます
③ ドアは静かに閉めます
④ 椅子に座ります
⑤ 箱にしまいます
⑥ ごはんを食べます
ほとんどの望ましくない行動は、肯定的な言い方に替えることができます。
今すべきことは何なのかを伝えましょう。
良いこと・メリットを期待させる
「~したら、○○して良いですよ」「~したら、○○できる」といったような伝え方をします。
「~」の部分にはしなければいけないことが入り、「○○」には子どもにとって良いこと・メリット・嬉しいことが入ります。
子どもはお母さんが課した課題に取り組んだ結果、何らかの特典が得られるわけです。
ここでのポイントは、行動するかしないかは子ども次第であるということです。
行動しないのであれば、課題に取り組まないのであれば、特典が手に入らないだけです。
具体的には、以下のように使います。
今すぐ手を洗ったら、一緒にとっておきのおやつを食べよう
歯磨きをしてきたら、寝る前に絵本を読んであげられるよ
宿題をしたら、遊ぶ時間を増やして良いですよ
すぐにお風呂に入ったら、テレビを見る時間を15分増やして良いですよ
今お片付けをすれば、晩ごはんのおかずを1つ増やしてあげるよ
子どもが望ましくない行動をしているときに、「今こんな望ましい行動をすれば、こんな良いことが待ってるよ」と伝えてあげてください。
子どもは自分にとっての良いことやメリットを期待して、望ましくない行動をやめて、望ましい行動に取りかかるかもしれません。
良いことやメリット、嬉しいことなどの特典は、あくまでお母さんの指示に従うためのきっかけにすぎません。
従わないからといって特典を豪華なものにする必要はありません。他の方法を試してみましょう。
1つ注意点ですが、「~しないと、△△できないからね」といったような脅しの言い方にはならないように気をつけましょう。
今すぐお風呂に入らないと、テレビを見る時間を減らすからね
お片付けしないと、遊べないからね
といった言い方は、子どもによっては有効な場合もありますが、言われた子どもは嬉しい気持ちにはなりません。
喧嘩になってしまうこともあります。
否定的な言い方でなく、肯定的な表現で伝えてあげてください。
予告しておく
今日一日の予定や、予定があったけど変更になってしまった場合は、事前に予告しておきましょう。
大人もそうですが、子どもは急な予定変更が大の苦手です。
突発的にいつもと違うことが起きると、不安で落ち着きがなくなります。
不安で落ち着きがなくなった結果、大声で叫んでしまったり手が出てしまったりと望ましくない行動に繋がることもあります。
今日一日のんびりする予定だったけど、急に来客の予定が入った
旅行でお店巡りをする順番を決めていたが、急遽お休みのお店があって順番が狂った
職場に間に合うように家を出たが、突然の渋滞にあった
このように、当初の予定と違うことが起きると困ったり、不安になったり、怒る人もいるかもしれません。
子どもは予定の変更に大人よりも弱いです。
それでも、一日の予定表を作っておくことは安心感に繋がります。
子どもに朝伝えてあげられるように一日の予定表を作っておき、もし変更があった場合には説明しながら予定を変えることを伝えます。
マグネットで作っておくと、予定を変更したり入れ替えたりしやすいです。
子どもが確認しやすいように、予定表は目立つ場所に取りつけておきましょう。
予告しておくことは予定の変更に有効な方法ですが、今していることをやめて、他のことをしなければならないときにも有効です。
事前に予告しておくことで、子どもは行動の切り替えを受け入れることが多くなります。
例えば、子どもが遊んでいる最中に、「もうご飯だからお片付けしてね」と伝えたとします。
子どもからすると突然遊ぶのをやめるように言われたので、大抵は受け入れられずに「やだ!」となることが多いです。
しかし、事前に今していることが終わるまでの回数や時間を伝えておくことで、切り替えが良くなる場合があります。
具体的には、以下のように伝えます。
あと5分でお片付けだよ
あと5分でご飯を食べる準備するよ
あと3回で終わりだよ
あと3回で順番を交代するよ
なかなか行動や場面の切り替えができないなぁと言う場合に、試してみてください。
選択させる
大人が指示したことを子どもが「嫌だ!」「やりたくない!」と拒否したとき、選択肢を2つほど提案して、「じゃあどっちならするの?」「どうする?」と尋ねる方法です。
大人側が提案した選択肢から、自分がすることを選択してもらいます。
選択させる方法の重要なポイントは、自分で選んだことには取り組みやすいということです。
他人からやるように言われたことに取り組むよりも、自分で決めたことに取り組むほうが気持ちは楽ですよね。
選択させる方法の具体例としては、例えば以下のようなものです。
母:「勉強しなさい」
子:「やだ」
母:「今すぐ勉強するのと、お風呂の後に勉強するの、どっちにする?」
子:「・・・お風呂の後にする」
母:「わかったよ。お風呂の後ね」
母:「おもちゃを片付けなさい」
子:「やだ」
母:「今片付けるか、ご飯食べる前に片付けるか、どっちにする?」
子:「・・・今片付ける」
母:「偉いね」
具体例の中でお母さんは、「勉強しなさい」「おもちゃを片付けなさい」などを子どもに伝えています。
望ましい行動に取り組んでほしいのでしょう。しかし、子どもはやろうとしていません。
そんな時に、選択肢を提案して子どもに選んでもらいます。
ポイントは、最初にするように伝えたこと(勉強や片付け)を拒否されたからといって、勉強や片付けに取り組むことを取り下げなくて良いことです。
むしろ、拒否されても「じゃあ今するか、後からするならどっち?」と子どもに対して取り組むことを前提に話を進めます。
子どもが「やらない」と言ったことはスルーする気持ちで、「じゃあどうする?」と選択肢を提案し、選んでもらいましょう。
伝え方を工夫する
ここからは、先程紹介した「①肯定的に伝える」 「②良いこと・メリットを期待させる」 「③予告しておく」 「④選択させる」をどのくらいの文章量で、どのような声のトーンで、どのような声の大きさで伝えるのかといった様々な伝え方について説明します。
簡潔に伝える
子どもに伝える際の言葉は、必要最小限にします。
伝える際の文章量が多ければ多いほど、子どもには難しくなるからです。
しかし、短すぎると何も伝わりません。
「何をしなければならないのか」ということを、シンプルにして伝えてあげてください。
子どもに伝える際のポイントは、矢継ぎ早に次々と伝えないこと、言葉による指示は1回の指示につき1つの内容だけにすることです。
子どもが聞いて確実に理解できるように、ゆっくりと、単純に、伝えてあげましょう。
CCQ│穏やかに・近づいて・静かに
CCQとは、Calm(カーム│穏やかに)、Close(クロース│近づいて)、Quiet(クワイエット│静かに)の略です。
Calm
子どもに言葉をかける際は、「お母さん自身が穏やかに、子どもに近づいて、静かな声で伝える」ことが重要です。
Calm(穏やかに)は、「感情的になってしまわないように」ということを伝えています。
お母さんが何を言っても子どもが言うことを聞かないと、イライラして頭にくる人は多いでしょう。
つい感情的になって怒ってしまうこともあると思います。
しかし、怒りの感情はそのままに、子どもに話しかける際には怒っていることを出さずに、穏やかに、クールに伝えます。
「頭はクールに、心はホットに」という言葉もありますが、まさにこの言葉通りです。
心の中はイライラや怒りで燃えていても構いませんので、頭だけはクールに穏やかにいけると最高です。
Close
Close(近づいて)は、「子どもに近づいて話しかける」ことを説明しています。
子どもの遠くから伝えようとすると、どうしても大きな声になってしまって子どもからすると怒られているように感じることが多いです。
さらに、遠いというだけで子どもには理解が難しくなります。
子どもの目の前にはおもちゃなどの様々な物があり、耳にもテレビや他の人の話し声などの情報が絶えず入り続けています。
そのような状況にいる子どもに対して、遠くから何かを伝えても耳には入りづらいです。
子どもの目の前まで近づき、注目が自分に向いていることを確認した上で指示などを伝えましょう。
近づいて、名前を呼んで注目を自分に向けてから伝えるのが最も効果的です。
Quiet
Quiet(静かに)は、「小さな声で伝える」ことを説明しています。
言ったことや指示したことに対して子どもが従ってくれないと、わたしたちはつい声が大きくなってしまいがちです。
しかし、子どもに指示を理解させて行動させるのに、大声はまったく必要ありません。
逆に、大声は怒られているように感じさせてしまいますし、怖がらせてしまうものでもあります。
なぜ声が大きくなってしまうかというと、子どもの注意や注目がこちらに向いていないためです。
Closeでも説明したように、子どもに近づいてから名前を呼んであげるだけで、大声は必要ないことに気づくでしょう。
「○○くん、くつを脱ぎます」
と伝える際にも、CCQが使えます。
CCQは子どもに指示を出す時にはほとんど場合に有効です。
子どもの目の前まで近づき、しゃがんで目線を合わせた後に、「〇〇くん」と名前を静かな声で、落ち着いた声で呼びます。
子どもがこちらに気づいたら、「くつを脱ぎます」と伝えます。
CCQのイメージが掴めたでしょうか?
CCQ(穏やかに・近づいて・静かに)は、子どもに指示を出す上でとても重要なテクニックです。
子どもがなかなか言うこと聞いてくれなくて困っている、勝手なことをして言ってもやめない、という場合に使ってみてください。
ブロークンレコード│壊れたレコード
ブロークンレコードとは、同じ言葉を何度も繰り返し子どもに伝えるというシンプルな方法です。
子どもが「やだ」と言って拒否しても、色々な理由を言って言うことを聞かないときも、同じ言葉を繰り返し伝えてください。
次にご紹介する会話が、ブロークンレコードで伝えている例です。
母:「もう寝る時間だよ」
子:「まだテレビ見てるから」
母:「もう寝る時間だよ」
子:「まだ見てるもん」
母:「もう寝る時間だよ」
子:「なんで何回も言うの?」
母:「もう寝る時間だよ」
子:「もうわかったって。しつこいな」
母:「お、寝るんだね。偉いね。お休み」
ブロークンレコードで伝える際には簡潔な内容で、穏やかに・近づいて・静かに伝えることを意識してください。
もし子ども側がブロークンレコードを使ってきたら、あらかじめブロークンレコードで伝える回数を決めておいて、回数に達しても指示通りの行動ができなければ違う方法を試しましょう。
一貫した指示を与える
子どもへの指示は一貫したものにします。
次々と指示の内容を変えるようなことはしないようにしましょう。
その時の状況によっては次々と指示をしたくなります。
例えば、朝の時間帯などは、「ご飯食べて!」「着替えて!」「歯磨きして!」と矢継ぎ早に言いたくなりますが、一度指示したことを子どもが終えるまでは、次の指示は出さないようにしましょう。
一度に色んな内容の指示をされると、子どもが混乱してしまうためです。
焦って色々と言うよりも、CCQを使って1つの指示で1つの内容を伝えたほうが、子どもが望ましい行動を取ってくれることは多くなりますよ。
動作で伝える
ここまでは主に言葉で伝える際のポイントをお伝えしていましたが、動作による指示もあります。
子どもに指示したことを実際にやってみせる、指をさすなどがあります。
しかし、動作で伝える際にも言葉で伝えるときと同じように、ゆっくりで、単純なものにします。
1つの動作で伝えることは1つの内容です。言葉の指示と一緒に使うと効果的になります。
望ましくない行動に対するテクニック
ここからは、望ましくない行動に対してその行動を減らすためのテクニックになります。
しかし、ご紹介するテクニックは専門家であっても使用が難しい方法もありますので、少し試してみて「これは難しい」「今後も使っていくのは厳しそう」と思ったなら無理はしないでください。
「こういう方法もあるんだな」と気軽な気持ちでご覧ください。
保証してあげる
お母さんからすると困ってしまうような子どもの行動を、「こんなときならしても良いよ」と許す方法です。
つまり、子どもにその行動をしても良いことを保証します。
この保証するという方法は、「どうしてこのときは良くて、あのときはだめなのか」「どうしてこの場所なら良くて、あの場所はだめなのか」ということを説明しながら子どもに伝えてあげてください。
具定例を示しましょう。
例えば家中の紙を破いてしまうような場合、お母さんに黙って紙を破いてはいけないことを伝えたうえで、日付が過ぎた新聞紙やいらないチラシであれば破いても良いことを伝える。
壁や床に落書きをしてしまうような場合、壁や床に絵を描いてはいけないことを伝えたうえで、壁にかけてあるホワイトボードなら絵を描いても良いことや、ダンボールを床に敷いてその上になら描いても良いことを伝える。
家の中で大声を出したり走ったりする場合、家の中では大声や走ることはできないことを伝えたうえで、公園などの場所では大声を出したり思い切り走っても良いことを伝える。
買い物中にいつもお菓子コーナーの前で「買ってくれなきゃ嫌だ!」と叫ぶ場合、幼稚園の帰りに行く買い物ではお菓子を買わないことを伝えたうえで、日曜日に行く買い物では好きなお菓子を買ってあげることを伝える。
以上のように、基本的にはしてはいけないけれども、こういうときなら良いよと伝えるのが保証してあげるという方法です。
いつでも駄目、何が何でも駄目、というのは子どもからするとストレスです。
もし保証してあげることで子どもが望ましくない行動をやめて、適切な場所やタイミングでのみ行動するであればそれが一番です。
わたしたち大人も、家ではお酒を飲んでも良いですが、職場では飲んだらいけません。
車の運転中も飲んではいけません。
このように、職場や運転中などは禁止されている飲酒であっても、家であれば飲んでも良いよと「保証」されているわけです。
だからこそわたしたちは、日中や運転中は飲まずに我慢して、家に帰ってきて美味しく飲むのです。
子どもたちにも、その行動をしても良いタイミングや時と場合を教えてあげましょう。
1つ注意点ですが、全ての望ましくない行動をしても良いと保証してあげられるわけでありません。
友達や自分を傷つけるような行動などは保証できません。
望ましくない行動だけど、時と場合によってはしても良いなと判断できる場合にのみ保証してあげてください。
計画的無視
今回お話する中で最も難しいテクニックが、この「計画的無視」になります。
どういう方法かというと、子どもが困った行動をしても注意したり叱ったり説教をしたりため息をついたりせずに、子どもの行動から注目を外す方法です。
子どもが好ましくない行動をした場合は、注目(否定的な注目)をせずに行動を無視します。
子どもの存在そのものを無視するわけではありません。
子どもが今まさにしている望ましくない行動のみを無視します。
なぜ望ましくない行動をしているのに注意しないのか?叱ったりしないのか?と疑問に思う人は多いと思います。
普通であれば注意したり怒ったりすることが当たり前の対応になりますよね。
しかし、子どもの場合はお母さんや大人が注目すればするほど、注目を集めている行動は今後も増えていくことになります。
それは、子どもにとってお母さんたちから注目されることが嬉しいからです。このことを詳しく解説している記事があるので、興味がある方はご覧ください。
この計画的無視は成功するととても効果的な方法で、たいていの望ましくない行動、好ましくない行動は減っていきます。
育児書や専門書などにも、「望ましくない行動に対しては無視で対応しましょう」と書かれていることが多いですし、医師などの専門家に相談しても「相手にせず無視をしてください」と言われることもあります。
しかし、計画的無視は使用するうえでいくつか注意点があります。
計画的無視の最難関は、子どもの行動がエスカレートすること
計画的無視をすると、その子どもが今まさにしている望ましくない行動がエスカレートしていきます。
あなたが自動販売機でジュースを買うところを想像してください。
あなたはお金を入れ、飲みたいジュースのボタンを押しました。
普段ならそれでジュースが手に入ります。しかし、今日はなぜかジュースが出てきません。
するとどうでしょう?
あなたはきっともう一度ジュースのボタンを押したり、そのうち何度も荒々しく連打をしたり、自動販売機を叩いたりするのではないでしょうか?
普段なら1度ボタンを押すだけで良いのに、ジュースが出てこないのでだんだんと行動がエスカレートしていきますよね?
計画的無視をしたときに子どもがエスカレートするのも同じ原理です。
普段なら「買って!」と少し駄々をこねるだけで買ってもらえたお菓子が、今日はなぜか買ってもらえません。
お母さんは子どもから注目を外し、そっぽを向いて何も言わずに黙っています。するとどうでしょう?
子どもは「買って買って!」と大声で何度も叫ぶようになり、それでも買ってもらえないとなると床に寝転んで手足をばたつかせるかもしれません。
普段なら「買って!」と言うだけで良いのに、お菓子を買ってもらえないので子どもは望ましくない行動をエスカレートさせていきます。
しかし、エスカレートしても最後まで子どもに注目を与えず、絶え間ない望ましくない行動の嵐にお母さんが耐えきることができたときに初めてその行動は減っていきます。
「何をしても無駄だった」「何をしても買ってもらえない」と子どもは学習するためです。
そして、子どもが駄々をこねることをやめられたときに、すかさず「我慢できたね」と褒めてあげてください。
計画的無視は、褒めることとセットです。
望ましくない行動に対しては注目を与えずに変化を待ち、やめられたときや望ましい行動ができたときにすぐに注目して褒めます。
「望ましくない行動をしても欲しい物やお母さんからの注目は得られない、望ましい行動をしたときにお母さんから注目してもらえる」ということを学んでもらう方法です。
しかし、もしエスカレートした行動に耐えきれずに途中で「いいかげんにしなさい!」と注目してしまったり、「もうわかったから!お菓子買ってあげるから!」と欲しがっている物を与えてしまったとしたら悲惨なことになります。
子どもからすれば、ただ「買って!」と駄々をこねるだけだと買ってもらえなかったけど、大声で何度も「買って買って!」と叫べば買ってもらえるんだなと誤った学習をするためです。
こうなると大変です。今後何度もエスカレートした行動をするようになってしまいます。
計画的無視をすると心に決めたのなら、子どもがやめたり望ましい行動をするまで徹底的に最後まで続けることが必要です。
途中で妥協してはいけません。
もし耐えきれないなと思うのであれば、計画的無視はしないほうが良いでしょう。それくらい難しいテクニックになります。
外出先で起きる望ましくない行動には適さない
今ご説明したように、計画的無視は子どもの行動をエスカレートさせるので途中で妥協することはできません。
すると決めたのなら、注目を外し続ける必要があります。
しかし、先ほどの例のようにお店のお菓子コーナーで駄々をこねるといった外出先で起きる行動に対しては、使用することが難しいです。
なぜなら、「他の人の目があるから」です。
お母さんは計画的無視に関する知識があるので注目を外し続けることができるでしょう。
しかし、もしその場に他のお客さんたちがいたとすると、「どうして買ってあげないんだろう」「冷たい親だな」と感じるかもしれません。
そしてお母さん自身が、「自分は今周りから冷たい親だと思われているんじゃないか」「こんなに激しく駄々をこねている自分の子どもが恥ずかしい」と感じてしまうかもしれません。
そうなると、周囲のことを気にして妥協してしまうことにもなってしまいがちです。
そういった理由から、計画的無視を使うにしても、家の中で起こる望ましくない行動に対して使用するのが無難かもしれません。
望ましい行動がわからないだけの可能性もある
「望ましくない行動してるな・・・よし!計画的無視をしよう!やめたら褒めてあげよう。」と判断したとします。
しかし、もしかすると子どもが望ましくない行動をするのは、「何をすれば良いのかわからないから」かもしれません。
わからないからこそ、望ましくない行動が出てしまうことはあります。
もし「青信号で横断歩道を渡る」ということを知らない場合、赤信号で渡ってしまうかもしれません。
「外から帰ってきたら手を洗わないと風邪を引いてしまうかもしれない」ということを知らない場合、手を洗おうとしないかもしれません。
このように、するべき望ましい行動を知らないと、結果的に望ましくない行動に繋がってしまうこともあります。
計画的無視を使用する際には、その前にすべき望ましい行動を伝えてあげましょう。
望ましい行動を伝えても望ましくない行動を続けるならば、計画的無視を使用するチャンスです。
計画的無視はしっかりと考えてから使用しましょう。
軽い気持ちで行うと子どものエスカレートした行動を維持してしまいます。
よく考えて「計画的に」使用するべきテクニックです。
タイムアウト
計画的無視がひたすらに耐えるテクニックだとすれば、タイムアウトは積極的な方法だといえます。
タイムアウトは、アイスホッケーにおいて実際に使用されているペナルティです。
反則や相手チームの選手に対して危険な行為をした場合、コートから退場させられペナルティボックスという場所に入らなければいけません。
わたしたちの中には小さい頃、このタイムアウトに似たようなことを親からされた人もいるのではないでしょうか?
子どもの頃、悪いことをしたときに罰として押入れや物置部屋に入れられたり、家の外に出されたことはないでしょうか?
これは、タイムアウトに似ています。
しかし、子どもの望ましくない行動に対して行うタイムアウトの大切なポイントは、子どもを楽しい環境や心地良いと感じている環境、嬉しい物・好きな物から引き離すことです。
子どもにとって嬉しいことから引き離す点は、計画的無視と同じです。
計画的無視は、子どもにとって嬉しいお母さんや先生からの注目を外すテクニックです。
つまり、望ましくない行動には子どもにとって良いことが伴っているため繰り返し起こるのであり、その良いことを取っ払ってしまいましょうというのが基本的な考え方になります。
望ましくない行動をしても良いことがない(メリットがない)と学習すれば、その行動を今後もすることは少なくなっていきます。
具体的なタイムアウトの方法をご紹介します。
- 子どもにとってその場で嬉しい物、楽しい場所になっているものを考える(例えば、スプーンを投げてご飯を食べない場合、スプーンが嬉しい物)
- 嬉しい物、楽しい場所を取り除く(スプーンを取り上げる。ご飯も下膳する)
- 子どもを部屋の隅に用意しておいた椅子などに座らせる
- 1分間、何もしないで退屈な時間を過ごさせる
タイムアウトの基本的な方法は部屋の隅などに座らせることですが、退屈な部屋に連れていき、その部屋で過ごさせる方法もあります。
その場合、タイムアウトに使用する部屋はタイムアウト室と呼ばれます。
タイムアウト室は専門的な施設でない限り一般家庭では難しいと思いますが、タイムアウト室の特徴をお伝えしておきます。
- 危険なもの(窓や落下物)がなく、暴れても大丈夫であること
- 子どもにとって嬉しくなるような物がないこと
- 静かであること
- お母さんがすぐに確認できるような場所であること
アイスホッケーで使用されるタイムアウトは、行為の重さによって長さが長くなったりしますが、子どもの望ましくない行動に対して使用する場合は行動の中身に関わらず1分間で十分です。
タイムアウトを行う場合は、淡々とした態度で行います。
子どもが望ましくない行動を繰り返しているときはお母さんも頭にきていることが多いので、感情的にならずに淡々と「タイムアウトをします」と言ってから椅子やタイムアウト室に連れていきます。
タイムアウトには親子共々頭を冷やすことができるメリットもあります。
1分間が終わって元の場所に戻ったらすべきことを伝えてください(例えば、取り上げていたスプーンやご飯を出し、「ご飯を食べます」と伝える)。
もし再びスプーンを投げたり問題行動をしたのであれば、もう一度同じタイムアウトの手続きを行なってください。
少しでもスプーンを使ってご飯を食べたなら、思い切り褒めてあげてください。
最後に、タイムアウトは計画的無視と同じく、計画的に使用する方法です。
いくつもの望ましくない行動に対して使用するのではなく、どの問題行動に用いるのかをあらかじめ決めてから、1つの行動に対してのみ行なってください。
そのほうが効果的に望ましくない行動を減らしていくことができます。
レスポンスコスト
レスポンスコストは、簡単に言うと罰金(ペナルティ)です。
望ましくない行動をしたらお小遣いが減らされたり、できるはずだったゲームの時間が短くなったり、ゲームそのものを今日はできなくなったりします。
つまり、子どもが望ましくない行動をしたら、子どもにとって嬉しいことや好きな物が減ってしまうという手続きです。
注意ですが、お母さんが意地悪で行っていると捉えられないように気を付けてください。
子どもにとって嬉しい物や好きなことが減るというのは、嬉しい物や好きなことから引き離すタイムアウトと似ています。
考え方は同じで、「自分が望ましくない行動をした結果、この結果を招いた」「望ましくない行動をすると、自分にとって良くないことが起こる」ということを学習してもらうことを期待しています。
ただし、レスポンスコストは子どもにとって良いことが減ったりなくなったりするわけですから、非常に怒ります。
怒ったとしても、やると決めた以上は淡々と最後までやり遂げてください。
子どもにほだされたりして途中でやめてしまうと、計画的無視でお話したように今まで以上に大変なことになります。
計画的無視、タイムアウト、レスポンスコストは、やると決めた場合最後まで躊躇せずにやり通すことが最も重要です。
褒めて終わる
伝える内容や伝え方、望ましくない行動に対するテクニックとして計画的無視やタイムアウト、レスポンスコストなど様々なことをご紹介してきましたが、全てに共通することとして、「最後は褒めて終わる」という大原則があります。
望ましくない行動をしていたが、肯定的な伝え方をした結果、望ましい行動ができた。
このときにすかさず褒めます。
計画的無視をしており、最後はやめることができた。このときにすかさず褒めます。
タイムアウトを行い、元の場所に戻った際に望ましい行動ができた。このときにすかさず褒めます。
レスポンスコストの場合も、ペナルティをやり遂げて終えているなら、望ましくない行動をしたことは水に流します。
その後のお説教やなぐさめは一切いりません。
その後、望ましい行動をした場合は思い切り褒めてあげます。
子どもが望ましくない行動をする場合、お母さんの大半は感情的になってしまうことが多いです。
お母さんも人間ですので、感情があるのでそれは仕方ありません。
しかし、子どもが望ましくない行動をやめられたとき、そして指示に従って望ましい行動をできたときには、すぐに大いに褒めてあげます。
「望ましくない行動をしても褒められることはない、望ましい行動をしたら褒められる」ということを子どもには学んでもらうのです。
絶対に許してはいけない行動への対処法
絶対に許してはいけない行動とは、道路に飛び出す、ベランダの柵に登ろうとするといった命や重大な怪我に繋がる可能性のある行動です。
これまでお話してきた望ましくない行動とは違います。
お母さんの心情的には、こちらを困らせてくる子どもの行動はどれも「絶対に許せない!」ものかもしれませんが、行動を分類することは対応するうえでとても重要です。
なぜかというと、これまでご紹介した数々の方法は望ましくない行動に対して有効なものですが、絶対に許してはいけない行動に対しては適切な対応ではないからです。
道路に飛び出そうとしたり、ベランダの柵を登ろうとしている時にCCQや計画的無視などをのんびり使っているひまなんてありませんよね。
絶対に許してはいけない行動に対しては、すぐに近づいて手や体を掴んででも「やめなさい」と言ってすぐにやめさせます。
命や重大な怪我に繋がる可能性ある行動に対しては、「絶対に駄目だ」ということを伝えます。
子どもに行動をやめさせたときは、子どもも急にお母さんに強く言われたので泣いたり混乱しているかもしれません。
一旦落ち着くための時間を取ると良いでしょう。
そして、その後にどうしてその行動を取ると駄目なのかということを今回お話したCCQなどを使って伝えてあげてください。
絶対に許してはいけない行動への対応をまとめておきます。
- 子どもが絶対に許してはいけない行動をしている・しようとしている
- すぐにとめる
- 落ち着くための時間を取る
- 危険な行動をやめられた行動をやめられたことを褒める
- どうして駄目なのかを伝える
- 説明を聞けたことを褒める
強い叱責や体罰が禁じられている理由【おまけ】
「駄目!」「やめなさいと言っているでしょ!」という強い叱責や体罰を多用することは、以下の副作用があるために推奨されていません。
行動自体を減らしてしまう
子どもは叱られないようにするために、あまり行動しないようになります。
何もしなければ、叱られることを避けられるからです。
つまり、子どもから積極性や意欲が失われます。
何かを教えたことになっていない
「駄目!」「やめなさい!」だけを言われても、子どもからすると「じゃあ何をすれば良いの?」となってしまいます。
だからこそ、望ましくない行動への対処法として「肯定的に伝える」「簡潔に伝える」といった方法があります。
一時的に効果があるだけで長続きはしない
確かに、強い叱責や体罰には子どもがすぐに行動をやめるという効果があります。
しかし、長続きすることはありません。
喉元過ぎれば熱さを忘れるのと同じように、しばらくするとまた同じ行動を子どもはしてしまいます。
継続して行動をやらせないためには常に子どもを叱る人が側に必要ですが、それは現実的ではありませんよね。
強い叱責や体罰はエスカレートしやすい
今までは軽い叱責で子どもはすぐにやめていたが、子どもがやめなくなってくると叱責が強くなっていきます。
叱責の効き目が出るまでエスカレートしていき、効き目が出たところで叱責の強さは固定されます。
子どもが次に望ましくない行動をしたとき、エスカレートしてしまった叱責がすぐに使用されてしまいます。
効き目が出るまでエスカレートするのは計画的無視と同じですね。
これはとても危険性があり、虐待に繋がりやすいともいわれています。
子どもにネガティブな反応が出る
強い叱責や体罰を受けた子どもは、人そのものを怖がるようになったり、「自分は駄目なんだ」とネガティブになる可能性があります。
積極性や意欲を失った結果、自分への自信や生活への楽しみも薄れていきます。
自分がされたことを他の人にもしてしまう危険性がある
自分がこれまでされてきたことを、力関係次第で自分が他の人にするようになる可能性があります。
以上の副作用を考えると、原則としては使用しないほうが良いでしょう。
望ましくない行動が起きにくい環境を作ったり、伝える内容や伝え方の工夫、計画的無視やタイムアウトなどのテクニックを上手く組み合わせて対処していきましょうね。
まとめ│望ましくない行動への対応方法
望ましくない行動への対応方法をまとめてみましたが、使えそうだなと思う方法はあったでしょうか?
基本的には、望ましくない行動が起きにくい環境を作ることに取り組んでみましょう。
そもそも問題行動が起きなければ、叱る必要はないのです。
問題行動がないということは、その時子どもは望ましい行動をしていることになります。
望ましい行動をしているのならそのことを褒め、今後も継続してもらうようにしましょう。
環境作りをしたけれど、それでも望ましくない行動が出るのであれば、伝える内容や伝え方でご紹介した「肯定的に伝える」「予告しておく」「CCQ」「ブロークンレコード」などを使用してください。
するべき望ましい行動を伝えることで、望ましくない行動をやめて望ましい行動に取り組む可能性があります。
それでも難しい場合は、計画的によく考えたうえで「保証」「計画的無視」「タイムアウト」などのテクニックを使いましょう。
ただし、これらの方法は使える行動や場面が限られているので、自分で対応することに難しさを感じる場合は専門家に相談してみることをおすすめします。
かかりつけの小児科や児童精神科などで相談してみると良いでしょう。
望ましくない行動への対応方法は複数ありますが個々に独立したものではなく、お互いに組み合わせて使用するものです。
環境をまずは整え、それでも起きる望ましくない行動には簡潔にCCQで望ましい行動を肯定的にブロークンレコードで伝える、といったイメージです。
ペナルティを伴うタイムアウトとレスポンスコストは、他の方法の組み合わせが特に必須です。
具体的には、次のように使います。
- まずは望ましい行動を肯定的に伝える
- その行動をやめないと、ペナルティを行うことをCCQで予告する
- 計画的無視を行い、注目を外す
- それでも望ましくない行動を行う場合、タイムアウトやレスポンスコストを使用する
子どもが大人を困らせる行動はやっかいなものが多いです。
少しでも今回の対応方法を使うことで、子どもと向き合うことが楽になるお母さんが増えてくれることを望んでいます。
あとがき
望ましくない行動への対応方法は、「子どもの褒め方10カ条」の記事とあわせて最もお伝えしたかった内容になっています。
どれか1つでも使えそうだなと思える方法があったら幸いです。
ご紹介した方法はどれも専門家が使用するものと同じですが、お母さんたちが使うことでも効果はあります。
ぜひ試してみてくださいね。
参考文献
奥田 健次 (2012). メリットの法則―行動分析学・実践編― 株式会社集英社
山上 敏子 (1998). お母さんの学習塾―発達障害児を育てる人のための親訓練プログラム― 二瓶社
山口 薫 (2010). 発達の気がかりな子どもの上手なほめ方しかり方―応用行動分析学で学ぶ子育てのコツ― 学研教育出版