子育て

強度行動障害とは? 大きく3つのポイントで徹底解説

自分の頭を床に叩きつける、強い力で周りにいる人を叩く、お店の中なのに大声で暴れまわる・・・。

そういった子どもの行動に悩まれている方はいませんか?

家庭で通常の育て方をして、かなりの養育努力があっても著しい困難が持続している状態は強度行動障害といわれ、社会全体で支えていく必要があるものです。

強度行動障害の詳しい内容や、自分の子どもが強度行動障害なのか気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

① 強度行動障害とは?

強度行動障害の定義

さっそく強度行動障害の定義です。一般的な説明ですね。

もう少し細かい説明になりますが、

  • 直接的な他害:噛み付きや頭突き等
  • 間接的な他害:睡眠の乱れやこだわりによって周囲の人が被害を被るもの
  • 自傷行為

これら3つが強度行動障害の大きな特徴で、通常は考えられないような頻度と形式で出現しているものになります。

強度行動障害の説明において最も重要なのは、強度行動障害はその人の状態だということです。

つまり、精神科的な診断(例えば、自閉症や知的障害)そのものではありませんし、もともと生まれつき備えているものでもありません。

その人の現在の状態を表す言葉なので、良くなることや悪くなることもあれば、なくなることもあるということを覚えておいてください。

逆に今は該当していなくても、現在の対応によっては将来的に強度行動障害の状態になる可能性もあります。

強度行動障害の状態になる原因についてはこの後解説していますので、そちらもご覧くださいね。

強度行動障害チェックリスト

強度行動障害の状態に該当するかどうかは、これまでに判定基準が発表されています。

市町村は判定基準のスコアを元にして、強度行動障害の状態かどうかを確認し、支援が必要だと判断した場合は必要なサービスを利用するように保護者の方に提案します。

判定基準には、旧法基準(以前使われていたもの)と新法基準(現在使われているもの)の2つがありますが、ご自身でチェックしてみる際にはどちらでも構いません。

わかりやすいほうで確認してみてください。

強度行動障害判定基準(旧法基準)

11の項目について、頻度に応じて得点(1点・3点・5点)をつけ、合計得点が10点以上を強度行動障害の状態であると定めています。

旧法とはいわれるものの、現在でも児童発達支援や放課後等デイサービスにおいては強度行動障害の児童の判定に使われるものになります。

強度行動障害判定基準は、旧法基準と呼ばれ以前まで強度行動障害の判定に市町村で使われていたものです。ただし、現在でも児童発達支援や放課後等デイサービスにおいて強度行動障害の状態にある児童を判定する際に使用されています。
強度行動障害判定基準項目(旧法基準)

行動関連項目(新法基準)

12の項目について0~2点で評価し、10点以上が強度行動障害の状態であると判断されます。

行動援護や重度訪問介護などのサービスの利用を決定する際に、この基準は使われています。

行動関連項目は、新法基準とも呼ばれており、強度行動障害を判定する際にはよく使用されています。行動援護や重度訪問介護のサービス支給決定に用いられています。
行動関連項目(新法基準)

繰り返しになりますが、これらのチェックリストを使用して「強度行動障害の状態である」と判定するのは市町村になります。

お母さんがご自身で使用してみて、「もしかしてうちの子って強度行動障害に該当するのかな・・・」と思ったら市町村の保健福祉課や児童福祉課にご相談ください。

今一人で悩んでいる方々にとって、チェックリストが支援に繋がるきっかけになることを願っています。

② 強度行動障害の原因

自閉症および知的障害との関連

強度行動障害は、自閉症と知的障害がともに中程度以上の場合になりやすいといわれています。

自閉症と知的障害の程度がともに中程度以上であると、強度行動障害の状態になりやすいといわれています。

特に、自閉症の特性が強度行動障害の状態に繋がりやすいです。

なぜかというと、自閉症の特性は多くの苦手さを本人にもたらすから。

例えば、

  • 先の予測をすることが難しい
  • 見えないものの理解が難しい
  • 抽象的で曖昧な表現の理解が難しい
  • 話し言葉の理解が難しい
  • 話し言葉で伝えることが難しい
  • やり取りの量が多いと処理が難しい
  • 少しの違いで大きな不安を感じやすい
  • 聴覚に過敏や鈍麻がある

これらの苦手さは、本人に大きな不安と緊張を与えます。

「不安や緊張から逃れたい」

「不安や緊張を誰かに伝えたい」

「不安や緊張に気づいてほしい」

そして、その困り感を誰かに伝えようとした結果、伝えるための適切な方法がわからないために自傷や他傷、こだわり、物壊し、睡眠の乱れ、異食、多動などの行動で示すようになってしまうと考えられています。

したがって強度行動障害の状態とは、

  • 自閉症の特性に対して十分な対応がなされていないこと
  • 適切な行動を教えられていないこと
  • 周囲が誤った対応を繰り返すこと

の3つが原因で生まれる状態だといえます。

もし「自閉症の特性に対して十分な対応がなされていれば」、本人は周りの環境に対して不安や緊張を抱かずに落ち着いた生活を送ることができます。

もし「適切な行動が教えられていれば」、不安や緊張があったときでも「自分の頭を叩く・相手を叩く」といった不適切な行動ではなく、相手に自分の状態を適切に伝えることができます。

もし「周囲が誤った対応を繰り返すと」、本人は「自傷や他傷をすれば自分の気持ちや考えを相手に伝えられる」と勘違いをしてしまいます(誤学習)。
「周囲が適切な対応をすること」で、自傷や他傷をしても相手には伝わらないことを学習できます。

つまりここまででおわかりの通り、強度行動障害は本人だけでなく、本人に関わる周りの人々や環境も非常に関連して生じる状態です。

強度行動障害は、本人の自閉症から来る苦手さと周りの環境とのミスマッチや、周囲の誤った対応の積み重ねによって徐々に作られたり、抑えていたものが一度に噴き出したりして現れる状態だということです。

強度行動障害は本人の障害自体の重さではなく、わたしたちの働きかけや環境調整の失敗など、様々な要因によって作られてしまった「支援が非常に難しい段階」ともいえる二次的な障害(二次障害)といえます。

強度行動障害の原因は主に3つあります。①自閉症の特性とミスマッチな環境があること、②適切な行動を教えられていないこと、③周囲が誤った対応を続けることです。

早い段階からの予防の必要性

強度行動障害は、3つの原因によって生まれる状態だとお伝えしました。

  • 自閉症の特性に対して十分な対応がなされていないこと
  • 適切な行動を教えられていないこと
  • 周囲が誤った対応を繰り返すこと

つまり幼児期のうちから、①本人の特性である自閉症の特性に対して十分な対応や調整がなされており、②療育などによって適切なコミュニケーション行動を教えられており、③周囲が正しい対応を繰り返していれば、激しい自傷や他傷などの行動はぐっと減らせると考えられています。

実際に、幼い時期から小学生くらいの時期に感じたストレスが、時間がたってから「強度行動障害」として現れるということが指摘されています(書籍:強度行動障害のある人の「暮らし」を支える、24ページ)。

かつて厚生労働省が実施した調査によると、0歳から小学生後期までの間に適切な行動を教えられていない、周囲が誤った対応を繰り返すことで、中学生以降の行動が極めて重篤になる可能性があるという報告があります。

強度行動障害は、0歳から小学生後期までの間に適切な行動を教えられていなかったり、周囲が誤った対応を繰り返すことで将来的に重篤化する可能性があります。
厚生労働省平成24年度障害者総合福祉推進事業「強度行動障害の評価基準に関する調査について」報告書

幼児期・児童期の適切な関わりが将来の「強度行動障害の予防」に繋がります

早ければ早いほど良いでしょう。

そして、幼児期・児童期を過ぎてしまったからといって諦めるのではなく、成人期においても、適切な関わり方で強度行動障害の状態を予防したり改善することができることを覚えておいてください。

③ 強度行動障害への対応

強度行動障害への対応は、「強度行動障がい支援者養成研修」を修了した専門家だけが支援するための計画書を立案し、支援することができます。

ここでは大まかな支援する際の流れと、支援する際の狙いなどをお伝えします。

最後に、薬による対応についても触れておきます。

基本的な支援の流れ

基本的な支援は、大まかに4つのプロセスの流れを大切にしています。

  • 行動を客観的に観察し、本人の課題となっている行動を確認する
  • 本人の特性を整理する(課題となっている行動がどういった特性によって生じているのかを考える)
  • 本人を取り巻く環境を整理する(行動に影響を与えていると思われる環境要因を考える)
  • 本人の特性や強み、ニーズを根拠にして、どういった支援をすれば良いのかを考える

特に支援するうえでポイントになるのは、目で見てわかる支援を行うことです。

上のプロセスでいうと、④番目の「どういった支援をすれば良いのか」に該当する話になりますね。

理由としては先程ご紹介したように、自閉症の特性には以下の苦手さがあるからです。

  • 目に見えないことの意味を理解したり思いを伝えたりすることに苦手さがある
  • 言葉の理解に苦手さがある
  • 複数の情報を処理することに苦手さがある
  • 雑多な環境の中から必要な情報に目を向けることに苦手さがある

したがって、見るだけで

「いつ」
「どこで」
「何を」
「どのくらい」
「どうやって」
「次は」

の6つの情報を確実に伝えるための工夫が、本人への支援になります。

6つの情報が伝わると、現在課題(問題)となっている行動を減らすことができることに加えて、今後の行動障害を予防することにも繋がりますよ。

強度行動障害は、6つの情報を伝えるためのわかりやすい環境を整備し、困った行動が出現しにくい状況を作る予防的な対応が原則だと覚えておいてください。

6つの情報を伝えるための工夫5つ

5つの工夫は、「時間の工夫」「場所の工夫」「方法の工夫」「見え方の工夫」「やり取りの工夫」になります。

順番に、簡単にご紹介しますね。

写真などもついたより詳しいご紹介として、こちらのページも参考になると思いますよ。

①時間の工夫

時間の工夫は、生活の見通しを持つことを目的とした支援になります。

ポイントは2つです。

  • どんな流れで生活するのかという理解を助けること
  • 言われるがまま(または自分の好き放題)ではなく、自分で適切に情報をキャッチし行動できることを大事にすること
自閉症の特性に配慮した支援として、スケジュールを用いる方法があります。スケジュールを用いることで、生活への見通しを持つことが期待できます。
スケジュールの一例

②場所の工夫

場所の工夫は、活動との対応や刺激の整理を目的として行う支援です。

ポイントは2つになります。

  • 「この場所では何をするのか」という理解を助けること
    • 整理整頓は基本中の基本
    • エリア(境界)を明確に
    • 場所と活動が1対1対応だと理想だが、現実的には難しい
  • 苦手な刺激を少なくするための配慮をすること
自閉症の特性への支援として、場所の工夫(構造化)があります。場所と活動を1対1対応にすることで、「この場所では何をするのか」という理解を助けることが期待できます。
学習する場所、休憩する場所、集まりの場所など、場所と活動が1対1対応になっている一例

③方法の工夫

方法の工夫は、やり方・終わり・次をわかりやすく伝えるための支援です。

ワークシステムやアクティビティシステムとも呼ばれます。

ポイントは1つです。

  • 「何を」「どのくらい」「どうやって」「次は」という理解を助けるためのシステムを提示すること

システムというのは、やることの内容や数、順番が変わっても進め方は同じという仕組みのことです。

自閉症の特性への支援として、ワークシステム(アクティビティシステム)という方法があります。この方法は、「やり方」「終わり」「次」といったことをわかりやすく伝えるための支援です。
ワークシステムの一例。棚の中に入っているのが取り組むべき課題です。終わったら「おわり」と書かれたトレーに入れる流れになっています

④見え方の工夫

見え方の工夫は、見るだけでわかりやすく伝えるための工夫です。

ポイントは、1つになります。

  • 見てすぐにわかる情報を提示すること
    • 必要な情報に注目しやすくする
    • 見るだけで何をすれば良いかがわかるようにする
    • 情報や材料が見やすい、扱いやすいようにする
自閉症の特性への支援として、見てわかる工夫の一例。視覚への支援としては、「視覚的組織化」「視覚的指示」「視覚的明瞭化」の3つがある。視覚的組織化は、情報や材料を見やすい・扱いやすいようにする方法です。視覚的指示は、見るだけで何をすれば良いかがわかるようにする方法です。視覚的明瞭化は、必要な情報に注目しやすくする方法です。
見るだけで何をすれば良いかがわかる工夫の一例。机拭きのやり方が、数字の順番と矢印の方向によって見ただけで理解できる

⑤やり取りの工夫

やり取りの工夫は、コミュニケーションツールとも呼ばれます。

ポイントは1つです。

  • 伝え合いわかり合うコミュニケーションを行うこと
    • コミュニケーションの手続きを視覚的に示し、コミュニケーションの成功体験をサポート
自閉症の特性への支援として、コミュニケーションに使用する絵カードの一例。受容的なコミュニケーションだけでなく、自発的なコミュニケーションも援助する必要がある。
自発的なコミュニケーションに使用するための絵カードの一例

ここまででご紹介した5つの工夫は、「TEACCH」や「ユニバーサルデザイン」とも呼ばれるものです。

色々な名前がついた方法ではありますが、結局のところ、日々を暮らしやすくするための工夫・わかりやすくするための工夫にほかなりません。

薬による対応

最初にお伝えしたように、強度行動障害は状態の名称であって、病気の名称ではありません

したがって、「この病気にはこの薬を使えば良い」というような明確な決まりがあるわけではないので、本人にあった薬を見つけるまでは時間がかかるかと思います。

薬の副作用も当然あります。

しかし、やはり薬は効果的である場合が多く、興奮や衝動性が落ち着いたり、こだわりが軽くなったりすることがわかっています。

薬だけで全てが上手くいくわけではありませんが、「薬による医療の支援」と「療育や行動援護などによる福祉の支援」の両方が強度行動障害への支援には必須といわれています。

本人にあった薬を見つけることを諦めないでくださいね。

まとめ│強度行動障害

強度行動障害を、3つのポイントに分けてご説明しました。

  • 強度行動障害とは?
  • 強度行動障害の原因
  • 強度行動障害への対応

強度行動障害は、家庭で通常の育て方をして、かなりの養育努力があっても著しい困難が持続している状態です。

ご本人のご家族だけでなく、福祉や医療といった支援者など社会全体で支えていく必要があるものです。

もしご家族や身の回りに「強度行動障害かもしれない・・・」という方やお子さんがいらっしゃったら、なるべく早く医療や福祉に繋がることができるように関わっていただけたらと思います。

早期の対応が強度行動障害の改善と予防に繋がります。

このページが強度行動障害の支援のきっかけになることを願っています。

あとがき

働き始めの頃、強度行動障害の高校生男子の療育に関わらせてもらうことがあったのですが、なかなか大変でした。今思い返せば良い思い出なので、強度行動障害に対しては思い入れがあります。

その子は最近になって性的な刺激に気づいた様子で、外出先だろうと何だろうと少し目を離したすきにズボンとパンツを脱いで自慰行為をしてしまうことが多発していました。

自慰行為そのものを禁止することは当然しませんし、できません。誰にでも性的な刺激を享受する権利がありますので、禁止してしまうと人権侵害の問題にもなります。

家族や関係機関のスタッフたちで話し合った結果、「出先(外)では駄目、家の風呂場でするならOK」というルールを伝えていこうということになりました。

出先ではズボンを簡単に下げられないようにベルトをつけて、もしズボンを下げようとした場合には「裸の男の子が性器を触っているイラストに大きなバツ印がついた絵カード」を見せ、「ここではできません」と口頭で伝えて自慰をしようとする手を止めるようにしました。

反対に、「裸の男の子が性器を触っているイラストに大きなマル印がついた絵カード」を風呂場に貼っておき、風呂場ではお父さんの協力を得て、自慰のやり方をイラスト付きのもので練習してもらいました。

まったく出先でしないようにはなりませんでしたが、回数などは減り、触ることは家の風呂場で多くなりました。

以上のように、強度行動障害にはチェックシートもありますが多様な状態を呈するものです。

早めに福祉や医療と繋がっておくと後々楽になったり、心配事も減るでしょう。有効に活用していきましょうね。

参考文献

特定非営利活動法人 全国地域生活ネットワーク(監修)(2020). 強度行動障害のある人の「暮らし」を支える――強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]―― 中央法規出版株式会社

-子育て
-