子育て

応用編「なぜ子どもは同じことを繰り返すのか?」後編 

全ての行動は、「行動の法則」によって起きるか起きないかを左右されます

つまり、行動の法則を理解して扱うことができれば、子どもが繰り返し行うお母さんを困らせる行動をとめることができるかもしれません。

行動の法則を理解することは意外と簡単です。

しかし、理解して実践するとなると難しさを感じることが多くあります。

まずはこちらの前編をご覧になって、興味が湧きそうでしたら今回の後編を読んでみてくださいね。

行動の法則について理解できたとき、あなたはどんな行動を目の前にしても途方に暮れることがなくなり、何らかの対策を思いつくことができるようになるでしょう

行動分析学のおさらい

行動分析学とは心理学の一分野で、行動が増えたり減ったりすることに関する法則・理論を明らかにする学問です。

非常にユニークな点として、行動分析学には原因と結果を真逆に考えるという特徴があります。

一般的には、何か出来事があった際には「原因が先で結果が後」と自然に考えます。

例えば、ウイルスに感染したから(原因)、発熱した(結果)と考えます。

一般的な出来事は、原因が先で結果が後にある。

しかし、行動に関していえば、行動の原因は行動の先(前)には無く、行動の後にあるのです。

行動の原因は、行動の後にある

わたしたち人間の行動は、行動した結果、どのような経験をしたのかによって変化していきます

行動した結果、本人にとって良い結果が起こればその行動は今後も繰り返されますし、

行動した結果、本人にとって嫌な結果が起こればその行動は今後繰り返されなくなるでしょう。

このことは、メリットの法則と呼ばれています。

行動した結果、自分にとってどのようなメリットが起きたのかを重要視する考え方です。

行動はメリットの法則にしたがう。行動した結果、その結果が自分にとって良いことであればその行動は今後も繰り返される。一方、行動した結果が悪い結果であれば、その行動は今後繰り返されることはない。

メリットの法則は、ありとあらゆる行動に適用されます。

普段あまり意識せずにしている行動にも適用されるため、どんなに些細な行動だったとしても何らかのメリットが必ずあるはずです。

メリットがなければ行動が繰り返されることはありませんから。

  • 朝早く起きる▶朝ごはんを作れる、自由な時間を作れる
  • 顔を洗う▶さっぱりする
  • 髪を整える▶綺麗になる
  • 朝ごはんを食べる▶食欲を満たせる、おいしさを感じる

いかがでしょうか? わたしたちは、朝起きてから常に自分にとって良いこと(メリット)がある行動をし続けています。

以上のように行動は、行動した結果どのような結果が起きたのかを重要視します。行動の前に起きていたことではなく、行動の後に起きたことに注目するのです。

メリットの法則

行動した結果、本人にとって良い結果が起こればその行動は今後も繰り返される。

行動した結果、本人にとって嫌な結果が起こればその行動は今後繰り返されなくなる。

行動が今後も繰り返されるかどうかは、その行動がメリットをもたらすかどうかによる。

行動を強める「強化」の法則とは

行動が繰り返されるかどうかは、その行動をしたことで起きる結果によって左右されると説明しました。

行動を起こしたことでメリットがあればその行動は今度も繰り返され、メリットがなければ行動は繰り返されません。

応用編の前編では、「行動の直後に出現すると、その行動の将来の生起頻度を上げる刺激、出来事、条件」のことを好子(こうし)と説明しました。

この後編では、嫌子(けんし)について説明します。

嫌子│けんし

本人にとって良いものである好子とは違い、嫌子は読んで字の如く、嫌なものであるという認識で大丈夫です。

嫌子│けんし

  • 行動の直後に消失すると
  • その行動の将来の生起頻度を上げる
  • 刺激、出来事、条件のこと

わたしたちは、ある行動をした直後に嫌子がなくなったり減ったりすると、その行動をますます繰り返し行うようになります

嫌子とは、なるべく接触を避けたいと思うもの全てです。ですので、行動した結果、嫌子をなくしたり減らしたりすることができる行動にはメリットがあるため、今後も繰り返されます。

嫌子消失による強化

  • 行動の直後に
  • 嫌子が消失したり
  • 嫌子が減少する
  • という経験をすると
  • その行動は将来起こりやすくなる

「嫌子消失による強化」と聞くと漢字ばかりが並んで難しい印象を受けるかもしれませんが、理解は簡単にできると思いますのでまずは具体例をご覧ください。

ちなみに前編でも説明していますが、強化とは「行動を強くすること、つまり増やすこと」です。

言い換えると「嫌子消失による強化」とは、「行動をした結果自分にとって嫌なことがなくなったため、今後も繰り返しその行動を行うことが増えた」となります。

行動の法則の基本形│嫌子消失による強化

「嫌子消失による強化」は、前編でお話した「好子出現による強化」と同じくらい重要な言葉です。

お母さんたちを困らせる子どもの行動のほぼ全ては、「嫌子消失による強化」と「好子出現による強化」の法則によって繰り返し起きていることだと認識しましょう。

それでは、「嫌子消失による強化」の例をご覧ください。

嫌子消失による強化の例。乾燥してガサガサしている手にハンドクリームをつける行動は、ガサガサしている状態(嫌子)を消失させるため今後も繰り返されると考えられる。

最近は手をアルコール消毒することも多く、乾燥してガサガサしてしまっている方も多いのではないでしょうか?

その状態の手は多くの方にとって嫌な状態だと思います。嫌子ですね。

そんなときにハンドクリームをつけることができれば、ガサガサしている状態を改善することができます。つまり、嫌子が消失したり減少するわけです。

嫌子を消失させたり減少させる行動は、今後も繰り返し起こるというのが「嫌子消失による強化」の法則でした。

以上のことからハンドクリームをつけるという行動は、ガサガサしている手を改善できる限り今後も繰り返し継続して起きることになります。

嫌子消失による強化の例。鼻水がある際に鼻をかむという行動は、嫌子である鼻水を消失させるため強化されている。

鼻水が鼻の中でズルズルしている感覚・・・嫌な人も多いのではないでしょうか?つまり嫌子です。

だからこそ、わたしたちは鼻水に気がつくとティッシュで鼻をかみます。

鼻をかむことで、鼻水という嫌子を消し去ることができるからです。

普段からしている当たり前の行動ですが、この「鼻をかむ」という行動は行動の法則によって成り立っていることがわかります。

嫌子消失による強化の例。宿題をやらなければならない時、勉強しないといけない時に、勉強道具を投げたり暴れたりすることで、たいていは「勉強しなくて良い」と言われることが多い。この場合、暴れることで嫌な勉強の機会がなくなるので、強化されている。

多くのお母さんは、子どもに「勉強しなさい」「宿題やったの?」と言ったことがあるのではないでしょうか?

子どもの反応としては、嫌々ながら最終的には取り組むことが多いと思いますが、中には鉛筆やノート、プリントなどを投げて「やりたくない!」と暴れる子もいます。

暴れるわが子を目にしたお母さんは、最初は「そんなことをしても駄目だよ。勉強しなさい」と対応しますが、段々と激しくなっていく子どもを前に「わかったから!今日はしなくても良いよ」となることが多いです。

子どもからすれば良いことが起きていますね。

暴れることで大嫌いな宿題や勉強の機会から逃れられるというメリットがあるので、今後も「勉強しなさい」と言われたときに暴れることが繰り返されるかもしれません。

嫌子消失による強化の例。暴れたりその場から走って逃げ出してしまう子どもの多くは、嫌なことがあり、それから逃れようとしているだけかもしれない。

子どもにとっては、勉強だけが嫌なことではありません。

年齢が低い子どもであればあるほど「嫌だな」「我慢できない」と感じることは多いです。

さらに、言葉もまだ発展途上なため、上手く言語化できずに暴れたり走って逃げたりすることがあります。

嫌なことから逃げるための手段として確立してしまっているわけです。

お母さんや先生たちからしてみれば、「こちらの言うことを聞けない乱暴な子」と捉えることもあるでしょう。

たしかに乱暴な子のように見えるかもしれませんが、もしかすると自分の身を嫌なことから守るために行動をしているだけかもしれません。

嫌子消失による強化の例。嫌子消失による強化の法則で繰り返されている行動は、嫌なことを回避するために行われている。例えば、お母さんから注意されると「キレる」子どもがいるが、これは自分がキレることによってお母さんからの注意が途中で終わり、好きなようにさせてもらえることがあるためである。

先程から暴れたりキレたりする行動が続いてしまっていますが、子どもの乱暴な言葉や行動に翻弄され、途方に暮れてしまうお母さんは多くいらっしゃいます。

子どもといっても年中さんくらいから(4~5歳くらいから)行動面で激しくなる子はたくさんいます。

具体的には、お母さんや先生から「~しなさい」注意された結果、「うるさい!」「だまれ!」などの暴言や、近くにある物を投げたり壊したりといった暴力を行います。

そうすることで、最初は注意していたお母さんや先生であっても、注意することをやめて子どもの好きなようにさせておくという対応を取りがちになります。

子どもにとって(大人であってもそうですが)、人から注意されることはおもしろいことではありません。どちらかといえば嫌なことでしょう。

キレて「うるせぇ!」と言えば大人が引き下がるわけです。キレるメリットがありますね。

つまり、今後も繰り返される可能性が高いです。

以上のように、「嫌子消失による強化」の法則で何度も繰り返されている行動は、嫌なことを回避するために行われている行動です。

嫌子消失による強化の例。マフラーを巻くという行動は、寒さという嫌子を消失または減少させるため、今後も繰り返されると考えられる。

乱暴な行動ばかりが続いたので、また日常の中で自然に行っている行動に戻りましょう。

マフラーを巻くという行動によって、誰にとっても苦手な寒さという嫌子を無くしたり減らしたりすることができます。

つまり、マフラーを巻く行動は嫌なことから回避するために行われている行動です。

暴れる、キレるといった行動をこれまでの説明で取り上げたので「嫌子消失による強化」に対してマイナスイメージが付いてしまったかもしれませんが、そんなことはありません。

わたしたちが日常生活を送る中で、「嫌子消失による強化」によって維持され、繰り返されている行動は無数にあるのです。

まとめ│嫌子の消失によって行動を強化する「嫌子消失による強化」

  • 行動が繰り返される原因は、行動の後にある
  • メリットの法則とは、行動した結果、自分にメリットをもたらした行動は今後も繰り返されるという法則のこと
  • 嫌子とは、行動の直後に消失するとその行動の将来の生起頻度を上昇させる刺激、出来事、条件のこと
  • 強化とは、行動を強くすること、つまり増やすこと
  • 嫌子消失による強化とは、行動の直後に嫌子が消失したり嫌子が減少するという経験をすると、その行動は将来起こりやすくなること

「嫌子消失による強化」の法則は、いかがでしたでしょうか?

普段の何気ない行動にも関わっていることが理解できたのではないでしょうか?

今回の「嫌子消失による強化」に、前編でお話した「好子出現による強化」を併せれば、理解できない行動はほとんどありません。

子どもが暴言を吐いたり、暴力を振るったり、お母さんを困らせたりする行動をした場合には、必ずその行動にはメリットが伴っていると考えてください。

もしかすると暴力を振るうことで、しなくてはいけない嫌なことから逃れられるのかもしれませんし(嫌子消失)、周囲の人たちから注目を得られるのかもしれません(好子出現)。

「嫌子消失による強化」と「好子出現による強化」の両方が影響して、強力に維持され繰り返されている可能性もあります。

自分を圧倒してしまうような行動を目の前にしても、その行動の後に原因があることを忘れないでください。

必ずその行動を維持しているメリットがあるはずです。

嫌子消失と好子出現の可能性を考慮して分析してみてください。原因がわかれば対策を考えることができます。

行動の直前と直後に何が起こっているのかを常に意識するようにしましょう。

あとがき

今回お話した「嫌子消失による強化」ですが、おそらく皆さんが学生の頃に経験したことがある具体例をご紹介しましょう。

それは、「試験の前日に部屋の掃除を始めてしまう」行動です。

そうです。あれです。皆さんは経験ありませんか?わたしはありますよ!部屋にあった本棚の整理だったり、机の上の片付けだったり、はたまた音楽を聞いたりして試験勉強の時間を減らしてしまっていました・・・。

これは、部屋の掃除をしたり好きな音楽を聞くことで、やりたくない試験勉強から逃れているんです。

嫌なことから回避したり逃れたりするために行われる行動は、「嫌子消失による強化」で維持されているのでしたね。

どうでしょうか?「嫌子消失による強化」の法則に親近感が湧きませんか?

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

次の記事でお会いしましょう。

参考文献

奥田 健次 (2012). メリットの法則―行動分析学・実践編― 株式会社集英社
杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・マロット, R .E.・マロット, M. E. (1998). 行動分析学入門 産業図書

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