発達障害は「しょうがい」なの?
発達障害って「病気」なの?「治る」ものなの?
最近よく耳にするようになった発達障害ですが、「障害」の言葉を含むこともあり、正確に理解することが難しいお母さんも多いでしょう。
言葉が独り歩きしてしまっている現状もあると思います。
そこで今回は
発達障害とは実際どういったものなのか?
障害なのか?
病気なのか?
「発達障害です」と診断されたらどうすれば良いのか?
などの発達に関するあれこれについてご説明していきましょう。
そもそも「障害」って?
発達障害に含まれている「障害」について、まずは解説します。
難しい言葉になりますが、法律である障害者基本法において障害者とは、以下のように定められています。
つまり、心身に何らかの特徴があり、それによって日常生活を送ることが難しい場合に障害であると定められます。
逆にいえば、心身に何らかの特徴があったとしても、日常生活を何とかうまくやっていけるならば障害とはいわないということになりますね。
「日常生活を何とかうまくやっていける」ことがポイントになります。
なぜかというと、日本をはじめとした世界がこれまでやってきた障害者支援のほとんどは、心身に特徴がある人たちであっても日常生活を過ごしやすくするための工夫やサービスだからです!
身近で見られる点字は、目が見えない人であっても外出できるようにするためのものですね。
横断歩道が青になった際に音がなることも、目が見えない人への外出支援です。
スロープやエレベーターは、歩くのが困難な方への外出支援や移動支援になります。
学校や職場、買い物、病院など外出することは日常生活を送るうえで必須であるため、外出支援は障害者支援の中でも多いと考えられます。
他にも、最近ではパソコンやタブレットなどの電子機器を用いた支援も増えていますよ。
高校や大学受験の際に、字を正確に書くことができない学習障害の診断がついている生徒に対して、パソコンを使って答案を作成することを奨励したり、字を読めない生徒に対して音声案内で問題文を読み上げるといった対策も行われています。
発達障害という言葉については、それとセットのように「子どもの過ごしやすい環境を整える」「子どもの特性に合わせた学習環境を提供する」といったことがよくいわれますよね。
これらは全て、「本人に何らかの特徴があったとしても、その人を取り巻く日常生活の不便を少なくして、何とか生活していけるようにしよう」という発想から生まれています。
もしあなたの子どもが発達障害と診断され悩んでいるのなら、障害という言葉だけに捉われるのではなく、
「どうしたら過ごしやすい環境を整えてあげられるだろうか?」
「子どもが日常生活を送るうえで自分にできることは何だろう」
「園や学校ではどんなふうに普段生活しているのだろう」
といった日常生活に目を向けた視点を持ってみてください。
十分に力を発揮できる環境で生活できるのであれば、障害とはいわないかもしれません。
発達障害と診断されるのはどうして?
発達クリニックなどの小児科や児童精神科の医師は、お母さんの話を聞き、子どもの様子を見たうえで「発達障害です」と診断します。
障害に関しては先程ご説明したように、子どもに発達上の特徴があり、加えて園や学校での生活や家庭での暮らしがうまくいっていない場合に診断されると考えられます。
障害の言葉だけでもショックが大きいのに、さらに診断という重苦しい言葉も付いてくるのです。
医師の伝え方にもよると思いますが、お母さんとしては出来れば聞きたくない言葉でしょうし、実際に嫌だと思います・・・。
(中には診断が付くことで安心した・・・というお母さんもいるので様々ですが)
ではどうして医師がそんな嫌なことをしてくるのかというと、診断が付くことでその子どもとお母さんに様々な支援やサポートを届けることができるからです。
まず、医師によって発達障害の診断または発達に関して要支援の判断がなされると、日常の困り感を少なくするための薬を処方してもらえたり、作業療法士や言語聴覚士、公認心理師をはじめとした専門スタッフから子どもに合わせた支援を受けられるようになります。
他にも、集団や個別で発達支援を行う児童発達支援や放課後等デイサービスといった児童福祉サービス(療育)を受けることができます。利用者は、利用料金の1割負担で発達支援サービスを受けられますよ。
小学生以上であれば、環境や個人への配慮として特別支援学級という選択肢もあるでしょう。
以上のように様々な支援やサービスを受けた結果、集団生活への理解や他者との関わり方、気持ちや行動のコントロールを身につけていき、少しずつ日常生活を何とかやっていける状態になります。
するとどうでしょう?障害といえるのでしょうか?
いえなくなってきますよね。
次第に病院へ受診する間隔が伸びていき、最初は1ヶ月や2ヶ月おきだったものが半年になったり、1年後になったり、最終的には「もし何かあったら来てください」と言われるようになっていきます。
当然といえば当然です。
日常生活を何とかうまくやっていけるということは、それだけ困り感や問題が減ったからです。
困っているからこそわたしたちは病院に行くわけで、困りごとが少ないのであれば病院には行きませんよね。
日常生活をうまくやっていけると障害とはいわなくなる理由がわかってきたでしょうか?
まとめ│診断を付ける理由は様々な支援やサービスを届けるため
医師がどうして発達障害の診断を付けたり発達に関する要支援の判断をするのかというと、様々な支援やサービスを子どもとお母さんに届けたいからです。
日常の困り感が減って、楽しい生活を送ってほしいからですね。
だからこそ、ショックを受けてしまうお母さんがいたとしても、医師は診断をします。
医師の診断がなければ専門スタッフからの支援を受けられなかったり、児童福祉サービスを受けられない場合があるからです。
(必ずしも医師の診断が必須なわけではありませんが・・・)
診断は、支援を受けるきっかけ作りの場と捉えることもできるでしょう。
もし診断を受けてしまった場合は、
「どういった発達支援を病院では受けられるのか?」
「子どもに合った児童発達支援や放課後等デイサービスはどこだろう」
「家でもできる子どもが過ごしやすい工夫はあるだろうか?」
といったことを医師やスタッフに質問したり、考えてみたりすると前向きな視点を持てるうえに、子どもと家族の将来にもつながりますよ!
発達障害って実際どういったものなの?
ここまでの解説を踏まえて説明すると、発達障害とは何らかの発達上の特徴があり、その特徴によって日常生活を送ることが難しい場合に医師が使用する言葉です。
医師は子どもと家族に適切な支援を届けるために、現状でつらい思いをしている子どもやお母さんに対して発達障害の言葉を使用します。
もし日常生活での困りごとが減り、病院に行く必要がなくなってくれば発達障害の言葉を気にすることは減っていくでしょう。
では、発達上の特徴とはどういう意味でしょうか?
一言でいえば、その人の個性(性格や長所・短所)になります。
ただし、ただの個性ではなくひときわ大きい(あるいは小さい)個性といえるでしょう。
大事な考え方「スペクトラム│連続性」
聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、スペクトラムの言葉の意味は連続性です。
自閉症のことを自閉スペクトラム症と呼ぶこともあるので、そこで聞いたことがある人もいるかもしれません。
スペクトラムを解説します。
スペクトラム│連続性
- 発達障害と診断されるくらい日常生活に制限をもらたすような発達上の特徴だとしても、診断されない人との明確な違いはない(つまり、診断の有無を分けるような境界線があるわけではない)
- 発達上の特徴は、個性の延長線上にある
発達上の特徴とは個性であるとお伝えしました。
両者の関係性を図で見てみると、もっとわかりやすくなりますよ。
発達上の特徴は個性に含まれるものですが、園や学校、家での生活が難しくなるほどの場合は、「発達上の特徴」と呼ばれることになります。
個性のひとつである「活発さ」を例にご説明しますね。
「活発さ」にはスペクトラム(連続性)があり、程度の低いものから高いものまであります。
「活発さ」の程度がどのくらいなのかは、人によってばらばらです。だからこそ、個性と呼ばれるのです。
程度が低い人であれば、誰かと一緒に体を動かして遊ぶよりも、一人で静かにお絵かきをしたり折り紙をして遊ぶことが多いでしょう。こういった子どもは、「大人しい子」といわれることが多く、「この子の個性や性格だね」といわれます。
「活発さ」が中程度(そこそこ)の人の場合は、鬼ごっこをして遊んだり体を動かして遊ぶことが好きでしょう。こういった子どもは「活発な子」「明るい子」といわれることが多いと思います。性格と呼ばれる範疇ですね。
しかし、「活発さ」の程度がひときわ大きくなり、それによって園や学校、家での生活が困難になると、それは個性や性格とは呼ばれずに「発達上の特徴」と捉えられ、医師からはADHD(発達障害のひとつ。特徴して過活動がある)と診断される・・・ということなります。
(ここで「活発さ」を扱ったのは説明をわかりやすくするためです。決して「活発さ」という個性の程度のみで発達障害となるわけではありません)
まとめ│個性がひときわ大きい(小さい)と発達上の特徴と呼ばれようになる
個性には程度があります。
世の中には程度が大きい人から小さい人までおり、その違いが性格や個人差を生み出すのです。これを「個性にはスペクトラム(連続性)がある」といいます。
大人しい人、活発な人、動きすぎて落ち着けない人・・・違いはあるように見えますが、同じ「活発さ」という一本の線の上にみんないます。程度が大きいか小さいかという違いだけです。
つまり、発達障害と診断される人だとしても、診断されない人との明確な違いや診断を分ける境界線があるわけではありません。
発達障害は病気ではありません。誰もが持つ個性がひときわ大きい(または小さい)特徴を持つ人です。
個性が生活を難しくするほどの程度になってしまうと、発達障害の特徴である不注意や多動性、衝動性、人への興味関心の薄れ、感覚過敏などの発達上の特徴と呼ばれるようになります。
同じ個性だったとしても、程度の問題で発達上の特徴と呼ばれるようになるわけです。ただし、これは困っている人に支援やサービスを届けるためにあえて使う言葉なので、そこまで気にしなくても良いでしょう。
発達上の特徴について補足説明
発達上の特徴は個性そのものなので、「誰かのせいでこうなった」というものではありません。誰にも原因はありませんよ。
個性や性格と同じように、生まれ持って備えているものです。個性なのだから当たり前ですね。
じゃあ、
「発達障害と診断されたらどうしたら良いの?発達上の特徴は生まれつきなんでしょ?」
と思われる方もいるかもしれません。
もちろん大丈夫です。
診断を付ける理由でも先程ご説明したように、発達上の特徴があったとしても、集団活動で必要なスキルを学んだり環境調整をすることで少しずつ日常生活を送れるようになっていきます。
医療や福祉、教育の分野などで支援やサポートが始まっています。もし気になることがあるのであれば、早めに医療や福祉と繋がっておきましょう。
以下の記事ではお母さんの頼りになりそうな支援機関をまとめてあります。ご参考にどうぞ!
その人らしさ(個性や強み)を残しつつ、生きていくことができるようになりますよ。
まとめ│今日から学ぶ発達あれこれ
よくある疑問に答える形で今回のまとめとしましょう。
発達障害って実際なんなの?
- 誰もが持つ個性のひときわ大きい(または小さい)ものを生まれつき持っている
- その個性によって日常生活に困難がある場合、個性は発達上の特徴と呼ばれ、医師からは発達障害と診断される場合がある
- 医師は子どもや家族に支援やサービスを届けるために発達障害という言葉を使う
- 支援やサービスの結果、日常生活での困り感が減ってくれば病院に行くことは少なくなっていく。発達障害という言葉を気にすることもなくなっていく
発達障害は「しょうがい」なの?
- 障害とは心身に何らかの特徴があり、それによって日常生活や社会生活に相当な制限を受けていること
- 何らかの発達上の特徴があり、それによって日常生活が困難になっているならば、医師から発達障害と診断される可能性がある
- 支援やサービスの結果、日常生活での困り感が減ってくれば病院に行くことは少なくなっていく。発達障害や「しょうがい」という言葉を気にすることもなくなっていく
発達障害は「病気」なの?
- 病気ではない
- 発達上の特徴とは個性がひときわ大きい(または小さい)もの
- 発達上の特徴は個性の延長線上にあるため、程度の違いでしかない
発達障害と診断されたら?
- 病院から医療的な支援やサポートを受ける
- 児童発達支援や放課後等デイサービスなどの児童福祉サービスを提供する施設を探し、見学などをしたうえで利用するか考える
- 子どもが日常生活を送りやすくなるように、環境調整をする(家での工夫、学校での配慮など)
環境調整についてはこれらの記事をご覧ください。
どうして発達障害と呼ぶの?
- 人が最も成長する子どもの時期(発達の時期)に日常生活での困りごとや問題が発覚しやすいから
- 発達に異常がある、ちゃんと発達しない、という意味ではない
- 誤解を生みやすい言葉ではある
いかがでしたでしょうか?発達障害についての理解が深まれば嬉しいです。
次回でもお会いしましょうね。
あとがき
年度末から年度始めはどうしていつもあんなに忙しいのでしょうか・・・笑
私も3月で退職し、4月からは職場が変わりました。
環境の変化に加え、暖かくなったり寒くなったりと気候の変動も大きいです。
健康を第一に、がんばっていきましょうね!