子どもの行動に困っていませんか?途方に暮れることはありませんか?
困っているとしたら、それは子どもの行動を分類してみることが助けになるかもしれません。
「行動」は、①望ましい行動、②望ましくない行動、③絶対に許してはいけない行動の3つに分けることができます。
望ましい行動は、身支度を自分一人でできる、お友達と仲良く遊ぶ、お母さんのお手伝いをするといった行動のことであり、今後も増えてほしい、将来に渡ってできていてほしい行動です。
逆に望ましくない行動は、お友達を叩く、暴言を吐く、物を投げるなどの減ってほしい、できれば無くなってほしい行動になります。
絶対に許してはいけない行動は、道路に飛び出す、ベランダの柵に登ろうとするといった命や重大な怪我につながる可能性のある行動です。
行動を今ご説明した3つに分類できると、「この子どもの行動のときには、このように対処する」という方針や対処を明確にすることができ、子どもと大人の両方にとって生活が今よりも楽になるかもしれません。
まずは行動を記録することから始めよう│行動観察のススメ
子どもの行動を理解するためには、行動観察が必ず必要です。
行動観察なくして、行動を理解することは不可能と言っても良いくらいです。
難しいものではないので、安心してください。スマホのアプリでもできますよ。
行動観察の手順は、①その行動がどんなものなのか、②どんなときにその行動は出るのか、③その行動の結果、自分や周囲の人はどのように対応しているのか、という3つを観察・記録することです。
要するに、行動だけに目を向けるのではなく、行動の前後に何があったのかを把握することがとても重要になります。
詳しい行動観察についてはこちらの記事を御覧ください。
なお、行動観察では問題行動や逸脱行動だけでなく、周囲の大人にとって嬉しかった行動や好ましい行動、望ましい行動なども記録してください。
できるだけ多くの行動に目を向けて記録できると、その後に行う行動の分類がスムーズに行えます。
褒めること・注目することのパワー
行動にはいくつかのルールがあります。
法則といっても良いもので、「こうすると行動は今後も増えていく」「逆にこうすると行動は減っていく」などの行動の増減に関わるルールです。
そのいくつかあるルールの1つに、「わたしたち人間は、行動した後に自分にとって良いこと・嬉しいことが起きるとその行動を今後も繰り返すようになる」というものがあります。
子どもにとって褒められることは嬉しいことですので、子どもが望ましい行動をした場合にはうんと褒めてあげてください。
褒められることで、子どもはその行動を今後も繰り返し行うようになります。単純に回数が多くなったり、今までは家の中でだけしていた行動が、家の外の場面でもするようになることもあります。
褒めることと近いですが、子どもにとっては注目されることも重要な意味を持っています。
わたしたち人間は、注目されると嬉しかったり安心感を感じる生き物です。
例えば、髪を切った際に「髪切った?」と周囲から言われると嬉しく感じると思います。「その髪型似合ってるね!」とまで言われていなくても、つまり、褒められているわけではなくても注目してもらえるだけで嬉しくなるのです。
子どもの場合は注目の効き目が大人よりも強くなります。
肯定的な注目だけでなく、否定的な注目であっても子どもは嬉しく感じてしまいます。
肯定的な注目には褒めることも含まれますが、それ以外にも好意的な表情や仕草なども含まれます。否定的ではないもの全てともいえるでしょう。
逆に、否定的な注目には叱ることや怒ること、睨むことなどが含まれます。
ここで注意してほしいのは、否定的な注目であっても子どもにとっては嬉しい注目であるということです。肯定的な注目と変わりありません。
したがって、わたしたち大人がすることを整理すると、子どもの望ましい行動に対しては褒める・肯定的な注目をすることで対応しましょう。一方、子どものしてほしくない行動、望ましくない行動に対しては注目しないことで対応しましょう。
子どもに、どんなことをすれば自分は注目され、どんなことをしたら注目されないのかを教えることが必要です。これは大人の責任であり、子育ての目的でもあります。
「問題」とは何か? 問題行動の意味をはっきりさせる
さて、そろそろ行動を3分類したいのですが・・・その前にあることを考えなければいけません。
それは、問題行動の「問題」とはなにを指すのかです。
人によってどれが問題行動になるのか、あるいは問題行動とはならないのかの判断は違うところがあり、もし子どもの周囲の大人たちで「問題」の捉え方が異なると一貫した対応ができなくなります。
例えば、次に挙げる行動は問題行動でしょうか?それとも少しは困るけども、問題とまではいえないような行動でしょうか?
- 独り言をぶつぶつ言いながら歩く
- 靴下を履きたがらない
- 幼稚園・保育園で「いただきます」が皆と一緒に言えない
- いつも同じテレビ番組を見たがる
- 車のおもちゃでしか遊ばない
- すれ違いざまに人を叩く、蹴る
- 道路に飛び出そうとする
- 園での活動中や学校での授業中に立ち歩く
何度もいうように、何が「問題」となるのかは人によって判断が違います。
ですが、あまりに多くの行動を問題行動や逸脱行動と捉えてしまうと子どもにとっても親にとっても楽しくありません。
子どもからすると「そんなことで怒るの?」「また怒られた」と思うかも知れませんし、親にとっても常に子どもの粗探しをしているような気分になってしまい、息が詰まります。
「正直しないでほしいけど・・・まぁいっか」とおおらかな気持ちで子どもの行動を見てほしいことを最初に伝えておきます。
さて、大半の行動はおおらかな気持ちで見逃してほしいのですが、一方で明らかな「問題」であり、周囲の大人によって何らかの対処や対応を必要とする行動もあります。
その問題とする際の判断基準ですが、大きく3つあります。
問題行動の判断基準
- 自分や他者を傷つける行動
- 生命を脅かす行動
- 社会参加や学ぶ機会を失うような行動
この3つを基準とした場合、先程例として挙げた行動のほとんどは問題行動とは捉えません。
独り言を言う大人はいますし、靴下を履かない俳優さんはいますし、大人になると職場の皆で「いただきます」と言って食べ始めることもありません。
同じ番組を見たがるのは大人も同じですし、車のおもちゃでしか遊ばない、特定の物しか好まないといったいわゆる「こだわり」も誰かを巻き込むようなものでなければ問題行動にはなりません。
逆に、「すれ違いの人を叩く、蹴る」といった誰かを傷つける行動や、「道路に飛び出そうとする」ような生命を脅かす行動、「園での活動中や学校での授業中に立ち歩く」といった社会参加や学びの機会を失うような行動は問題となることが多いです。
行動の3分類として、①望ましい行動、②望ましくない行動、③絶対に許してはいけない行動があるという話をこの後にしますが、問題行動の基準を満たすような行動は、②望ましくない行動や③絶対に許してはいけない行動に分類されることが多いです。
いずれにせよ、問題行動として捉える際に最も大事なことは、自分一人だけで「これは問題行動だ!」と判断するのではなく、周囲の人たちの意見も聞いた上で判断することです。
何が問題で何か問題でないのかは、ゆっくり焦らずに考える必要があります。
行動を3つに分類しよう│行動への対応方法を明確にする
行動観察した結果を見返してみましょう。
そこには、子どもの行動が記録されていると思います。
そしてそれらの行動を3つに分類します。
何度も話しているように、①望ましい行動、②望ましくない行動、③絶対に許してはいけない行動の3つです。
望ましい行動への対応方法
望ましい行動は、 身支度を自分一人でできる、お友達と仲良く遊ぶ、お母さんのお手伝いをするといった行動のことであり、今後も増えてほしい、将来に渡ってできていてほしい行動です。
この行動分類は難しく考えなくても大丈夫です。
周囲にとって好ましい行動だったり、お母さんが「してくれて嬉しい」と感じた行動であれば望ましい行動だと考えて良いでしょう。
子どもが望ましい行動をした場合の大人の対応は、「褒める・注目する・相手をする」になります。
わたしたち大人は、子どもに対してどんなことをすれば自分は注目され、どんなことをしたら注目されないのかを教える責任があります。
それが子育てになるのでしたね。
子どもが望ましい行動をしたらどんどん注目して褒めてあげましょう。注目の仕方や褒め方のコツはこちらの記事でご説明しています。
望ましくない行動への対応方法
望ましくない行動は、 お友達を叩く、暴言を吐く、物を投げるなどの減ってほしい、できれば無くなってほしい行動になります。
次に話す予定の絶対に許してはいけない行動と分類を悩むことになると思います。
ですが、そもそも3つの分類に正解はありませんので、最初のうちは「これは良くないなぁ」と思ったものを望ましくない行動にしておけば良いと思います。
望ましくない行動への対応方法としては、「わかりやすい指示を出す」になります。
子どもが望ましくない行動をするときは、今何をすれば良いのかがわかっていないときや、やるべきことはわかっていても正しいやり方がわからない場合が多いです。
子どもが理解しやすい指示の出し方や伝え方はこちらの記事でご説明しています。
絶対に許してはいけない行動への対応方法
絶対に許してはいけない行動は、道路に飛び出す、ベランダの柵に登ろうとするといった命や重大な怪我につながる可能性のある行動です。
問題行動の判断基準でお話した「生命を脅かす行動」に該当するものが絶対に許してはいけない行動になるでしょう。
絶対に許してはいけない行動への対応方法は、手や体を掴んででも「すぐにとめる」になります。
もし可能であれば、とめた後に子どもが落ち着くためのクールダウンの時間を設け、今後繰り返さないために「わかりやすい指示を出す」ことが必要です。
まとめ│行動の3分類
- 行動観察をしておくと子どもの行動への対処がスムーズになる
- 子どもの行動は大人や周りからの注目によって増加・維持されていることが多い
- 問題行動だと判断する基準は3つある
- 行動は、望ましい行動、望ましくない行動、絶対に許してはいけない行動に分類できる
行動を3つに分けることができると、その後の対応方法が明確になります。
ただし、行動を分類するには子どもの行動を観察し、記録することが必要になります。
行動観察は大変ですが、スマホで利用できるアプリなどもありますし、試してみることをおすすめします。行動観察をしてみると、普段自分が困っている子どもの行動に何らかの法則があったり条件があることに気付けることもあるでしょう。
行動を3分類した後の対応方法については簡単にしかお話していないので、望ましい行動を褒める際のコツや、望ましくない行動に対するわかりやすい指示の出し方を詳しく知りたい方はご紹介した記事をご覧ください。
あとがき
行動を3つに分類しよう!という記事を書こうとしたのですが、行動観察がメインになったような気がしますね・・・。
行動観察をしましょうと何度もお伝えしていますが、はっきりいうと実際に現場で働く専門家が行動観察をちゃんとしているかというとそんなことはありません。
紙に書くようなことはあまりせず、頭の中だけで何となく考えていることが多いです。
しかし、やはりしっかりと目に見える形にしておくことが大事ですし、本当に対処に困る行動の場合は行動観察が必須になります。
アプリなども開発されて行動観察を行いやすい環境にはなってきていますので、今後どうやったらもっと行動観察へのハードルを下げられるのかを考える必要があるなぁと思っています。