子育て

なぜ褒めることが必要なのか? 子育ての目的から考えてみる

なぜ褒めることが必要なのでしょうか?

「褒めて育てる」「褒めて伸ばす」という話はよく聞きます。ということは、「子どもを育てるには褒めることが必要」で、「伸ばすためには褒めることが必要」なのでしょう。

では子どもを育てるとは何でしょうか?子育ての目的とは何ですか?

「良い子に育てること」「心優しい子に育てること」
家族の数だけ子育てに対する願いや期待、目指しているものがあると思います。

普段は漠然と考えている子育てについて、今一度ここで明確にしておくと褒めることの必要性や大切さを確認できます

子育ての目的は望ましい行動を身につけ、望ましくない行動を少なくすること

子育ての目的は、子どもが望ましい行動を身につけ、望ましくない行動を少なくすることです。

つまり、子育てをするということは、子どもに望ましい行動を獲得させて増やし、望ましくない行動を少なくするために必要な方法を行うことだといえます。

「褒める」とは、子どもに望ましい行動を獲得させて増やすための代表的な方法の1つになります。

子育ての目的と褒めることの関係性について説明している。子育ての目的は望ましい行動を身につけることであり、褒めることによって子どもは望ましい行動を身につけていく。

子どもの望ましい行動とは

何が望ましい行動で、何が望ましくない行動なのかについては、国や地域、文化差などによっても変わるでしょう。

日本では周りの意見に合わせて自分の意見を強く主張しないことが望ましいかもしれませんが、アメリカでは自分の意見をはっきりと主張することが望ましいかもしれません。

各家庭においても違うでしょう。

山田さん家族では「机に向かって勉強するよりも友達と遊んだり身体を動かすことが大事」と考えて、毎日日が暮れるまで外で遊ばせているかもしれません。一方、佐藤さん家族は「小さいうちから勉強させておくことが将来を考えたときに大事」と考えて、お家での勉強を重視するかもしれません。

何が望ましい行動なのか、何が望ましくない行動なのか、これは人によって違いがあるでしょう。

「うちの子は優しい子に育ってほしい」「知的で聡明な子に育ってほしい」という家族の願いや期待によっても子どもに求める望ましい行動は変わるでしょう。

しかし、変わらない部分もあります。子どもが身につけるべき共通項目はあるのです。

  • 名前を呼ばれたら返事をする
  • 自分で服を着る
  • 順番を守る
  • 遊びのルールを守る

以上のような共通項目は、保育園や幼稚園、学校などでも望ましい行動とされているでしょう。

いずれにせよ、望ましい行動は、大人が「褒める」ことで子どもに身につけてもらうのです。

子どもは褒められた行動を繰り返す

「褒める」とは、子どもに望ましい行動を獲得させて増やすための方法の1つであるとお伝えました。

どうして褒めることで行動が獲得され増えていくのかというと、子どもにとって褒められることがとても嬉しいことだからです。

人間は、行動した後に起きる出来事によってその行動を今後も繰り返すかどうかが決まる。基本的に、行動した後に自分にとって嬉しいことが起きるとその行動は今後も繰り返される。

実際にわたしたち人間は、何らかの行動をした後に自分にとって良いこと・嬉しいことが起きると、その行動を繰り返し行うようになります

例えば、スマートフォン(スマホと省略します)を一日の間に何度も見る人は多いと思います。

「スマホを見る」は、行動です。なぜスマホを繰り返し見るのかというと、スマホを見ることで自分にとって知りたいことを調べられたり、LINEで友達と連絡が取れたり、ゲームができるからです。

知りたいことがわかるのも、友達とやり取りができるのも、ゲームができるのも全て自分にとっては良いことですよね。スマホを見ると良いことがあります。だからスマホを何度も見るのです。

しかし、通信障害で電波がない状態になったり、バッテリーが切れたスマホはどうでしょう?

スマホを見ても知りたいことを調べられないし、LINEもできないし、ゲームもできません。つまり、スマホを見ても良いことが何もないのです。きっとわたしたちは、電波が繋がる、または充電するまではスマホを見ることはないでしょう。

このように、わたしたちは行動後の結果によって、今後もその行動をするのかどうかが左右されます

だからこそ、ある行動を子どもがしたときに周囲の大人から褒められると、嬉しさによってその行動は増えるのです。

誰もが注目されたいと思っている

褒められることは、子どもだけでなく、大人であっても嬉しいものです。

大人の場合だと「もうこの歳になって褒められてもなぁ」と思うかも知れませんが、「注目される」と考えてみるとどうでしょうか?わたしたちは、誰もが注目されたい生き物です。

例えば、髪を切って誰かに「髪切りました?」と言ってもらえると嬉しくなりませんか?

新しい髪型を褒められたわけではありません。しかし、気づいてくれている、自分に注目してくれているとわかると嬉しいですよね。

このように、褒められていなかったとしても、「あなたに注目していますよ」ということが伝わると人は嬉しく感じます

人間は、注目されると嬉しく感じる生き物である。行動した後に注目されると、その行動は今後も繰り返されることが多い。

子どもは特に注目されることが大好き

当然、子どもも注目を浴びることが大好きです。

特に大好きなお母さんお父さんから注目されているとわかると嬉しいでしょう。

わたしたち大人は、子どもたちにどのような行動をすれば自分は注目され、逆にどのような行動をすれば注目されないのかを教える必要があります

子どもが望ましい行動をしたときに注目を与え、望ましくない行動をしたときに注目しないのは、子育ての目的にも合致します。

子育てが難しいのは注目の扱いが難しいから

この子どもの行動と注目の関係ですが、実際はそう簡単に上手くいきません

なぜならば、わたしたちは子どもがよくできているときこそ注目せず、できていないときこそ注目を与えるからです。

ちなみに、注目には「肯定的な注目(褒められる)」「否定的な注目(怒られる・叱責)」がありますが、子どもにとってはどちらも同じ注目に感じられるので、怒られても「注目してくれている!」と嬉しくなる場合が多いです。

実際の子どもとの生活を想像してみましょう。

ご飯をこぼすことなく食べているとき、服を自分で着れたとき、自発的に勉強しているとき、お店で静かにしているときには「できて当たり前」という考えがあるため特に褒めたりしません。

一方、ご飯をこぼしたとき、服を切れずにもたもたしているとき、勉強をしないとき、お店でうるさくしているときには「ちゃんとしなさい!」と怒ります。

つまり、実際のわたしたちは子どもが望ましい行動をしたときに(肯定的な)注目を与えず、望ましくない行動をしたときに(否定的な)注目をすることが多いです。

ついついわたしたちは、子育ての目的と真逆のことをしてしまうのです。

これが褒めることを含め、子育てを難しくします。

まとめ│Q. なぜ褒めることが必要なのか? A. 子育ての目的に合致しているから!

  • 子育ての目的は、子どもに望ましい行動を身につけさせ、望ましくない行動を少なくすること
  • 望ましい行動を身につけさせるための代表的な方法が、「褒める」ことになる
  • わたしたち人間には、行動の後に嬉しいことがあるとその行動を今後も繰り返す特徴がある
  • 子どもはお母さんに褒められることで、多くの行動を身につけていく
  • 注目されることは嬉しいことであるが、困ったことに否定的な注目によっても行動は身につき繰り返されてしまう

子育ての目的は、子どもが望ましい行動を身につけ、望ましくない行動を少なくすることです。

しかし、否定的な注目があることで子育て全般が難しくなっています。

子どもの褒め方については今後少しずつ知っていくこととして、まずは子育ての目的を達成するために褒めることが必要なんだと認識しておきましょう

ちなみに、褒め方について今すぐ知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

今回お話した注目と行動の関係などについてもっと理解を深めたい方は、こちらの記事が参考になると思います。

あとがき

こんにちは。

今回のお話に出てきた「子育ての目的│子どもに望ましい行動に身につけさせ、望ましくない行動を少なくすること」は、心理学の一分野である「応用行動分析」に基づいた考え方になります。

世の中には数多くの育児書や専門書があり、その中に出てくる子育てとは多少違う考え方になっているかもしれません。

「行動分析学」とは、行動が増えたり減ったりすることに関する法則や原理原則を明らかにする基礎的な学問です。「応用行動分析」とは、行動分析学で明らかになった行動の法則をあらゆる分野に応用する学問になります。

次回は「行動」についてのお話です。普段の日常で使う「行動」と、行動分析学における専門用語しての「行動」はかなり違います。

しかし、行動を正しく理解できると「なぜ子どもはこの行動を何度も繰り返すのか?」が理解できるようになるでしょう。お楽しみに!

参考文献

山口 薫 (2010). 発達の気がかりな子どもの上手なほめ方しかり方―応用行動分析学で学ぶ子育てのコツ― 学研教育出版

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